「絵に描いた餅じゃなく、食べられる餅を」 企画特化の独自路線切り拓く「miimuN」

 

「誰のために」を問い続ける

 とりわけ公共機関の公募案件であれば“前例踏襲”という壁の存在も大きい上に、当然ながら予算には税金が投入されることになる。目に見えた成果が出ていないのに“とりあえず”継続される事業や、ターゲットが不明な事業などもザラにあるのが現状だ。

 仲里さんは「公募する側も、それを受託する事業者も、自分たちがやっていることの“届け先”をもっと意識すべきなんです」と断言する。

 行政が絡む事業ではその性格上、公平性や平等性を期すために対象を「全ての県民に等しく」という文言が使われることが多い。しかし、中村さんは「これは実質無理な話だと思います。『全てがターゲット』ということは、『ターゲットがいない』とほぼ同義で、これでは誰にも届かない」と重ねた。

 ただ、こうした数多の問題や課題を踏まえつつも、中村さんは「問題だと思うことと、今自分にできることとはあくまで別に考えていくべきだと思っています」と言い切る。

「どう足掻いても現時点で出来ることしか出来ません。その範囲で、小さくとも着実に現状を変えられるように積み重ねていくしかないと思っています。『誰のために』ということを見失わず、行政の中の志ある人を仲間にしつつ続けていければ、そのうちに前例踏襲も“内側”から変えられるでしょう」

沖縄から生み出す「新しいもの」

 社名の「miimuN」は沖縄方言で「新しいもの」を意味する。中村さんが「未来を思う熱い人たちと出会える手段の1つ」と位置づける企画を通して、沖縄から新しいインパクトを生み出していくための拠点にしたいという気持ちを込めている。

文化的な懐が深い沖縄だからこそ、新しいものを生み出す創造力や企画力という“目に見えない力”が沖縄を自立に導くと本気で考えています。未来志向の人や沖縄に思いがある人たちとつながって、miimuNとしてできることをこつこつと1つずつ増やしていきたい。
 現在は提示されているものに対して挑戦する形ですが、ゆくゆくは自分たちで形式を決めていく段階から仕事を作り出せるような存在になりたいとも思っています」(中村さん)

 前のめりの姿勢でクリエイティビティを発揮して切り拓く“企画の道”の先に、何が見えるのか、何を見出すのか。今後の展開に期待したい。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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