慰霊の日に糸満生まれのラッパーKZ「ケンカを避けるHIPHOP文化」
- 2021/6/23
- エンタメ・スポーツ
2009年1月のことだった。糸満市小波蔵の工事現場で男性作業員が重機を使って掘削中、地中に埋まっていた不発弾が爆発、男性は一命をとりとめたものの、左半身の一部を失うなどの重傷を負った。戦後、64年が経っていた。
「あれ、同級生の弟だったんですよ」
沖縄戦の激戦地だった糸満で、6月23日に生を受けたラッパーのKZ。「沖縄の戦後はまだ終わっていないんじゃないか」という思いを抱き、平和な世の中を希求しながらも、それに向けて「沖縄の人たちが一つになっている感じがしなかった」と未来に向けて韻を踏む。
「右向け右じゃなくて左でもなく ストレートど真ん中みんな仲良くなる」―
身近にあった戦争の爪痕
20年ぐらい前は不発弾がまだその辺にごろごろ転がっていたと、先輩から伝え聞いていた。「今さら爆発するんだからね。まだまだ何千個も埋まっているっていう話もありますし」
前々から祖母の左目に何かしらの「違い」を感じていた。「義眼だよ」。爆弾の破片が目に当たったのだということを初めて知った時の感覚を思い出す。「こうやって戦争を生き抜いた人が、身近にいたんですよね」。戦後76年の歳月が過ぎて、もう他界してしまった祖母からは当時の話を肉声で聞くことができない。
「ケンカを避ける」ヒップホップカルチャー
ヒップホップは1970年代にアメリカ・ニューヨークで発生した、黒人やカリブ海周辺からの移民、すなわちマイノリティのカルチャーに発端を見る。彼ら彼女らが直面する貧困や人種差別といった問題について「現状を変えたい」「自由になりたい」という「エネルギー」の爆発から生まれた文化だ。ヒップホップ文化のひとつでもあるブレイクダンスは、ギャング同士の抗争の中で「ダンスで決着をつけよう」と発展していったものだ。