県内企業8割が後継者不在 沖縄の事業承継問題(上)

 

「後継者は悩みのタネ。知り合いの経営者の7割くらいの人たちが悩んでる。特に沖縄は終戦後の何もない時に事業を始めた成り上がりが多いので、ちょうど今は過渡期。同族に任せるのかそれ以外の社員に継がせるのかということに直面する時期だ」

 県内で食品機械を扱う会社の経営者の男性は、沖縄の事業承継事情についてこう語った。

 自身の事業でも、経営を託したいと考えている親族が社員として在籍しているが、経営者としての経験などを考慮すると「まだ“育っていない”ので、もう決めないといけない状況だが、スパっと決められない歯痒さがある」と思い悩んでいる。

不在率は飛び抜けて全国トップ

 81.2%。

 沖縄県内の中小企業での後継者不在率の数字だ。

 地域経済と雇用を支える沖縄の中小企業の数は、全国と比較して多い。そんな中で、後継者がいない企業の割合は、都道府県別でみると全国平均の65.1%を大幅に上回って全国一の数値となっている。帝国データバンク沖縄支店が2020年に県内全業種の2,206社に調査したところ、8割を超える1,792社が「後継者不在」と回答した。

全国の後継者不在率(帝国データバンクの「沖縄県『後継者不在率」動向調査」より)

 帝国データバンク沖縄支店の水城利治支店長は「80%という数字には事業承継への対応の出遅れが現れている」と分析する。

 後継者不足は数年前から全国的な問題だ。事業自体は黒字にもかかわらず、後継者が見つからずに廃業を選択するケースもある。日本政策金融公庫の調査では、60歳以上の経営者のうちの半数以上が将来的に廃業を予定しており、このうち約3割が後継者難を理由にしている。
 こうした中で、直近では新型コロナウイルスの影響で事業継続の可否を問われる状況に直面し、継承を断念する企業が多数出てきているケースも想像に難くない。

 県内の後継者不在率は81.2%で全国トップとなっているものの、データの推移をみると数値自体は2016年の86.2%をピークに4年連続で低下している。ちなみに、全国で80%を超えている県は沖縄以外にはなく、沖縄に次いで不在率が高いのは77.9%の鳥取県だ。

 水城支店長は「沖縄は飛び抜けている」とする一方で、数値の低下については「いわゆる団塊世代の世代交代をきっかけの1つとして、各自治体でも相談窓口が設置されるなど公的な事業承継支援の流れができた。それが少しずつ浸透して数字に出ている可能性はある」と説明する。

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