国内初「星空保護区」八重山が掘り起こす夜の観光新需要
- 2022/3/6
- 経済
エメラルドグリーンの海に真っ白な砂浜。沖縄観光の主力となっていた夏のビーチリゾートとは一転、「夜に星を楽しむ」という新しい“沖縄の自然”を満喫するニーズが高まっている。西表石垣国立公園が2018年に国内で初めて、アジアでは2番目の「星空保護区」に認定されたのを機に「星を見るために沖縄に来る人」が近年で増加。新たな観光チャンネルの一つとなっている。
星空保護区とは
星空保護区とは、アメリカに拠点を置く国際ダークスカイ協会が、暗くて美しい夜空を保護するエリアとして認定するもの。認定を受けた当時、西表石垣国立公園を擁する石垣市と竹富町は連名で「地域の星空のブランド力が高まり、星空資源を活用した観光振興が期待される」とコメントし、観光需要の掘り起こしを意識していた。さらに「八重山諸島の夜の自然環境や固有の生態系の持続的な保全にもつながる」として、自然保護への関心を高める契機にしたいとの考えだ。
2014年から認定へ準備
石垣市、竹富町からの依頼を受けて、星空保護区の認定に尽力した人がいる。星空保護区認定から4年間さかのぼった2014年に、石垣島の星空の美しさに魅せられて「星に特化した観光ビジネス」を立ち上げた星空ツーリズム株式会社(沖縄県石垣市)の上野貴弘代表だ。国際ダークスカイ協会東京支部に上野代表も名を連ねており、2014年から星空保護区の認定に向けた準備を進め、2017年に申請していた。
認定を機に、石垣島や西表島の星空の美しさが知られていったことも事実だ。同社で星空のガイドなどを務める、石垣市出身の宝園(ほうぞの)博之さんは「会社が発足した2014年当初に比べるとだいぶ認知度は広がりました」と語る。「コロナ禍になる前まで、ツアーにはかなりの人が入っていました。1回のツアーで多い時は100人ぐらい。想定していた定員は50人だったんですけど」と優しい笑顔で語る。
同社が所有する「星空ファーム」の真ん中で、ツアー参加者と一緒に星空を見上げながら「すばる(プレアデス星団)は八重山では大事にされてきたんですよ」と土地の歴史も踏まえながら説明する。すばるは八重山ではむりかぶしとも呼ばれ、空の真上を通っていくため、昔から収穫や種まき、出漁の時期などを示してくれる星団として生活に密着していた。宝園さんが一番好きな星でもある。
「星空が見たくてリピーターになる方も多いです。半年後に来て、前回とはまた違う星を楽しむ方もいらっしゃいますし、最初は1人で来たけど、その時の感動を分かち合おうと同じ時期に家族や友人を連れてくる方もいらっしゃいます」
夕方の便で到着しても楽しめる石垣島の自然
観光のナイトコンテンツの充実という点でも、星空の魅力を知ってもらう重要性を宝園さんは感じている。「夕方着の飛行機で来る方にも『夜からでも楽しめますよ』という提案ができます。着いたその日はご飯食べて寝るだけ、という方もいるでしょうし、小さいお子さん連れの方だとお酒の場にもあまり行けないでしょうから」