2021年度入域観光客数見込みは大幅減 コロナ前の3割水準
- 2022/1/21
- 経済
沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)とりゅうぎん総合研究所が2021年度の沖縄県内への入域観光客数見込みと、県経済への影響についての試算を1月21日付けで発表した。
入域観光客数は320万人の見込みで、2020年度比では616,400人増(23.9%増)だったが、新型コロナウイルスが感染拡大する前の2019年度と比べると、4,042,300人の大幅減(72.2%減)となった。21年度上半期は度重なる緊急事態宣言の延長で人の移動が減った後、秋口の全面解除で回復傾向に向かったものの、今月に入ってまん延防止等重点措置が再び発出されて減退を余儀なくされた状況になっている。
まん防発出で年末からの回復は叶わず
りゅうぎん総研によると、コロナが発生なかった場合の県経済の水準を標準とした試算では、20年度・21年度のGDPや就業者数の減少幅はほぼ同等、完全失業率の上昇値も同じ数値となった。
OCVBは今回の発表資料で、21年4~9月の“まん防”と緊急事態宣言の延長による観光客数の「大幅減」の後、10~12月の時点では徐々に需要が回復し、年末には「経済活動が活発化したこともあり、相当数の回復が見込まれる」と説明。
しかし年明け早々の“まん防”発出により「航空会社の予約動向が当初予測より大きく減退」と説明。さらに、修学旅行も1月上旬に数校が実施されたが、今後予定されていた分はほぼキャンセル。予約の大幅減退により航空便の減便が発生しているのが現状で、今後の追加減便もありうるという見通しだ。
来月2月以降についても、今月同様に予約動向は減退しており、既に一部航空便の減便も発表されている。2月からのプロ野球キャンプは有観客実施が予定されてはいるが、県や政府が“まん防”延長を視野に入れて議論を進める方針を示していることから、楽観はできない。
入域客数は前年比増加、経済は減退傾向
りゅうぎん総研の試算は、コロナ前を標準値とするため19年4月~20年2月と、19年3月の実績値を加えて入域観光客数を算出。設定値は995万6,900人。
実績値ベースでの20年度の観光客数は258万3,600万人で標準の値に対して737万3,300人減。観光収入は2,485億円で標準値比では4,925億円減となった。
これらの数値から、名目GDPが3,414億円減少、実質GDPが6.6%減少、就業者数が3万4,240人減少、完全失業者率が1.9%ポイント上昇、消費者物価が0.9%低下、税収が652億円減少するという試算結果となった。
21年度のOCVB発表の見込み値入域観光客数320万人は標準値比で、675万6,900人減となる。観光収入は2,464億円で標準値比4,946億円減。20年度とほぼ同水準だが減少幅は増えている。
名目GDPが3,428億円減少、実質GDPが6.6%減少、就業者数が3万4,390人減少、完全失業者率が1.9%ポイント上昇、消費者物価が0.9%低下、税収が654億円減少と、数値の減退傾向は20年度とほぼ同水準だ。
21年度の入域観光客数が前年比で増えていることを考慮すると、名目GDPなどの数値の減退傾向が同水準ということは相対的に経済状況は悪化しているともとれる。
この試算では観光客数と観光収入のみの影響を扱っており、県民の外出自粛や各種イベントの中止による影響は含まれていない。それを踏まえてりゅうぎん総研は「これらの影響も含めると、県経済へのマイナスの影響はさらに大きいものと推察される」と述べている。
コロナによる経済への影響が「致命的」であるということが言われ続けて、もう2年が経とうとしている。
「観光立県」を掲げる沖縄においては、全国に先駆けて観光に特化した独自施策を打ち出して存在感をアピールするということもあるいは出来たはずだが、そうした動きは無い。どころか、これまでの感染拡大とその対応を総括した上での観光産業支援体制の構築も充分とは言えない状況が続いており、観光業界からの悲鳴は全く鳴り止んでいない。
22年度からの“3年目”も同様の状態が継続すれば、「ウィズコロナ」への道のりは遠いと言わざるを得ない。