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沖縄の学力①全国学力テスト「小学上位、中学最下位」が続く謎
- 2021/12/16
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文部科学省が2007年から全国で毎年実施している「全国学力・学習状況調査」。いわゆる全国学力テストは、令和3年度も実施され、8月31日にその結果が公表されました。沖縄県の結果は、小学生が全国並み、中学生が全国最下位。中学生は、全国平均との差が5ポイント程度と、これまで以上にその差を縮めたとはいえ、今回も「小学生は全国水準かそれ以上、中学生は最下位」というこれまでの立ち位置から脱することはできませんでした。初回の2007年に小中ともダントツの最下位からスタートし、2014年にはようやく小学生が最下位から脱したものの、中学生はなおも最下位がずっと続いたままです。
この状況をどう受け止め、沖縄の学力向上はこれからどこに向かっていくべきか。3回シリーズで「沖縄の学力」について深掘りします。
■関連リンク
沖縄の学力②沖縄から今改めて問う、全国学力テストの意義 | HUB沖縄
沖縄の学力③沖縄が創造するべき「本物の学力」 | HUB沖縄
全科目最下位からのスタート
全国学力テストは、全国の小学6年生と中学3年生全員が、一斉に国語と算数・数学のテストを受けるという大規模な全数調査です(英語や理科、あるいは他学年も対象となる年もあります)。2007年に実施された第1回では、小中ともすべての科目で最下位。しかも正答率は全国平均に比べて中学生数学でマイナス14ポイント、その他の科目でもマイナス8ポイント程度と、大きな差がついてしました。はっきりと「最下位」が数字となって公表されたことは、県内外のマスコミにも大きく取り上げられました。これ以降、「沖縄は学力が低い」という強い印象が日本全国に定着してしまったのではないでしょうか。
小学生が最下位から躍進した理由
開始以後6年間も最下位が続いた沖縄でしたが、7年目の2014年に、小学生がついに最下位を脱します。国語A・Bがともに32位、数学Bが34位、数学Aに至っては6位(現在はA・Bの区別は廃止)と、これまでの定位置=最下位から大きな躍進を遂げたのです。沖縄県教育委員会は、2007年の最下位ショック以降、様々な策を講じてきましたが、この2014年の躍進では、当時の諸見里明県教育長による改革が特に大きな原動力になったといわれています。具体的には、「学力向上推進室」という特命チームを編成し、教育長自ら県内の小学校を巡回して学力対策を促すという、これまでにない大胆な方法で、学校の意識改革を強力に進めていったのです。
県教育長の強いリーダーシップの下、県下の小中学校全体の学力向上が大きく動き出したのを見て、ついに中学生も最下位脱出する日は近いと希望を持った県民も多かったに違いありません。
■参考記事
「劣等感を与えない」学力最下位からの脱出を牽引、元教育長に聞く | HUB沖縄
上位だった小学生が中学生になるとまた最下位?
ところが、小学生はその後もさらに成績を伸ばし全国上位となっていく一方、中学生はなかなか最下位を脱出することができません。2014年に初めて最下位を脱出した小学6年生が、中学3年生になる2017年のテストには特に期待が集まりましたが、悲願達成はなりませんでした。
全国上位の結果を出せた小学6年生でも、中学3年生になると最下位を抜け出せない。「小学生は上位、中学生は最下位」というこの不思議な状況は現在まで続き、もはや沖縄の定位置のようになってしまいました。
なぜ中学生だけ低いのか
もちろん、中学生の学力向上に関しても、県教委は市町村教委と連携して対策を打ち続けてきました。正答率の全国平均との差も一貫して縮小傾向が続いており、少しずつ、ただし確実に実を結んでいることは評価されるべきでしょう。