沖縄の学力①全国学力テスト「小学上位、中学最下位」が続く謎

 

 しかし、小学校とは異なり中学校での学力向上策はなかなか一筋縄ではいかない現実の方にむしろ注目しなければなりません。

 期待された2017年の結果が公表された際、県教委は「中学校では学習内容が高度になるため、急激な変化は難しい。小学校と違って教科で縦割りされることで、国語や数学の教員を除けば学力テストは身近ではなく、学校ぐるみの取り組みも浸透しにくい。授業時数が多く補習時間が確保しづらいことや、生活指導や部活などに教員が時間を取られるという問題もある」(2017年8月29日沖縄タイムス)と中学校における取組の難しさを説明しています。

もう順位は気にしない?

 他の都道府県も含めて全体を見渡すと、上位と下位の差がかなり縮まってきたことがわかります。令和3年度の中学生の結果を見ると、1位と最下位の正答率の差が、国語で9ポイント、数学で11ポイントとなっていて、10ポイント以内の差を「大きな差はない」とする文部科学省の分析に立てば、そもそも1位から最下位まで含む全体に大きな差はないという状況なのです。

 さらに文部科学省は近年、わずかな差で過度な競争をあおらないためとして、都道府県別の正答率を整数(小数点以下を表示しない)で公表しており、マスコミ側もその趣旨に配慮するようにして、最近では沖縄の中学生の最下位を強調する報道も少なくなってきました。

現状をそのまま受け入れていいのか

 小学生は頑張って全国水準をキープできているし、中学生は難しいながらも差が縮まっていく傾向だから、この調子で続けていけばよい― 少し乱暴な言い方ですが、県教委やマスコミなどにはこのような楽観ムードが漂っているように感じます。しかし、本当にこのまま現状を受け入れるだけでよいのでしょうか?

 私は、「学力が低い」とされてしまっている沖縄こそ、全国学力テストの意義や本物の「学力」とは何か、といった本質的な議論をもっと大胆に展開していくべきだと考えています。これまでの県教委の努力や成果は当然評価すべきものですが、現状からさらに踏み込んで、これからの時代に求められる資質・能力の育成を見据えた新しい取組にどんどんチャレンジしていくことこそ、今一番必要なことだと思うのです。

 県教委の学力向上策の指針となる「沖縄県学力向上推進5か年プラン・プロジェクト」にはこうした考え方がしっかり表明されています。一方、この指針は、新学習指導要領や沖縄振興基本計画などとのバランスに配慮しすぎていて、本気度や新しさがあまり感じ取れません。せっかくの理念に反して学校現場ではテスト対策や中途半端な授業改善に終わってしまうといったことにならないよう、県教委や市町村教委がもっと積極的に方向性を打ち出し、現場が安心して新しい取組にチャレンジできる環境を作っていかなければならないのではないでしょうか。

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