沖縄の学力②沖縄から今改めて問う、全国学力テストの意義

 

 文部科学省が2007年から全国で毎年実施している「全国学力・学習状況調査」。いわゆる全国学力テストにおいて、沖縄県は「小学生は全国水準かそれ以上、中学生は最下位」という定位置からなかなか抜け出すことができずに今ももがき続けています。前回コラムでは、小学生に比べて中学生の学力順位が低い理由や、「沖縄は学力が低い」というレッテルを押し返せないまま、もう順位は気にしないといったような楽観ムードまで漂い始めてきていることなどに触れました。

 このまま毎年テストをやり過ごすだけで本当によいのか。むしろ沖縄こそ、制度に真っ向から向き合い、目指すべき独自の道を模索すべきではないか。全国学力テストを通して3回シリーズで「沖縄の学力」について深掘りします。

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振り回されてきた沖縄

 全国学力テストには、学校に過度な圧力となっているとの指摘がなされ続けてきました。都道府県別の結果=順位は毎年注目を浴びるため、学校ではテスト対策に追われ、通常の授業時数にまで影響が出るなど、テストによって学校が疲弊しているというのです。特に沖縄は、制度開始以来、「最下位」「学力が低い」というレッテルに苦しみ続けてきました。制度本来の目的を逸れて、テストのたびに毎年強いプレッシャーが学校にかかってしまう様子は想像に難くありません。強力なリーダーシップで、2014年の初の小学生・最下位脱出を牽引した当時の諸見里県教育長もまた、自身の著書『学力テスト全国最下位からの脱出』(学事出版)で、深刻な序列化、劣等感をもたらす全国学力テストそのものを痛烈に批判しています。

文部科学省が説く「意義」

文部科学省
文部科学省

 文部科学省が平成29年3月にまとめた報告書「全国的な学力調査の今後の改善方策について(まとめ)」では、全国学力テストを実施する意義を説いています。特に、対象者全員で、かつ毎年実施するメリットについて、すべての自治体において教育施策の改善・充実が図られ、すべての学校において児童生徒1人1人のための指導改善・充実が図られることにあるとしています。さらに、テストを通じて、身につけてほしい力などを具体的なメッセージとして提示できるという効果を強調します。そして、結果分析から全体の施策や個々の授業に改善を落とし込んでいく取組の繰り返しを通じて、PDCAサイクルを確立を目指すというわけです。

 しかし、これには根強い批判があります。全体的な傾向の把握は抽出調査で十分可能だし、抽出による分析で教育施策の改善は十分図れるという考え方です。さらに、児童生徒1人1人の状況把握は重要であっても国がやるべき施策ではないと指摘します。海外でも毎年・悉皆で行う学力調査はほとんどなく、批判の多い制度を続ける理由としては、説得力に欠けると言わざるを得ないでしょう。

なぜ都道府県で順位をつけるのか

 最も批判が強いのは、なぜ都道府県別の結果=順位を公表しなければならないのかという点です。これによって過度な競争が生まれ、学校に強いプレッシャーがかかっていると考えられているからです。前出の報告書では、その理由をこのように説明します。

「規模(域内の広さ、児童生徒数、学校数等)が大きく、様々な地域を包含することなどから、弊害が生じるおそれが比較的小さいと考えられる」
「都道府県教育委員会独自の学力調査においても、都道府県全体の調査結果を公表している例が多く見られる」
「都道府県教育委員会は、教職員の給与費を負担するとともに広域で人事を行うなど役割と責任を担っている」
「国として国全体の調査結果について、説明責任を有しており、その観点から全国的な調査結果だけを示すのでは十分ではなく、都道府県単位程度の状況について公表する必要がある」

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