沖縄の学力③沖縄が創造するべき「本物の学力」

 

 文部科学省が毎年実施する全国学力テストにおいて、「小学上位、中学最下位」という定位置をなかなか抜け出せない沖縄は、近年学力向上の成果は一定見られつつも、「学力が低い」というレッテルを克服するには至っていません。しかし、全国学力テストはあくまでもほんの一部の能力を測っているにすぎないこと、沖縄県全体が学力向上に真剣であること、そして何より、沖縄の子供たちが実に多彩な資質・能力にあふれているという事実を、沖縄社会はしっかりと理解していると感じています

 そうであるならば、沖縄こそ、学力とは何かという本質的な問いに正面から向き合い、「学力が低い」というレッテルを大きなチャンスに変えることができるのではないか。沖縄こそ、全国学力テストでは測れない、これからの時代に求められる「本物の学力」を追求できるのではないか。「沖縄の学力」を深掘りする3回シリーズの最終回では、沖縄が自ら創り上げる「学力」の可能性に迫ります。

■関連リンク
沖縄の学力①全国学力テスト「小学上位、中学最下位」が続く謎 | HUB沖縄
沖縄の学力②沖縄から今改めて問う、全国学力テストの意義 | HUB沖縄

今改めて問う、「学力」とは何か?

 この問いに明確な答えを求めるのは難しいでしょう。これまで重視されてきた知識や技能に加えて、例えば最近では、社会の出来事や仕組みに興味関心を持つ力、そこに課題を見出す力、解決に向けて協働する力といったようなものが重要だという考え方もかなり浸透してきました。さらに、海外における事例や、教育学を中心とする学術的なアプローチの歴史まで含めると、実に様々な形で教育や学力について議論されてきたわけで、これらの知見を総括し、1つの答えを出そうとすることは、とても困難なのです。

 しかし、1つの原理原則を求める姿勢ではなく、様々な考え方を持ち寄って、その地域や時代に合った方法を取捨選択=ベストミックスして、「一定の方向性」を「共通理解」することがとても重要です。効果的で持続可能な教育を行っていくには、どうしても皆がよって立つ「土台」が必要だからです。つまり、教育や学力の「土台」は、時代に合わせて常にアップデートし続けていくことが大切だということです。

「学力」は誰のもの?

 「教育や学力は考え方や方向性を常にアップデートすべき」。この意見に反対する方はほとんどいないでしょう。しかし、ここで1つ大きな問題を認識しなければなりません。それは、その議論する場が実質、極めて限られているということです。教育施策を考える場合、やはり予算と権限を大きく握った文科省の影響がとても強く、地方自治体の取組は、文科省の方針の範囲内に収まらざるを得ません。これは、「『学力』とは?」といった本質的な議論が政府内に限られてしまい、地方は国での議論の後を追う方が合理的になってしまうということを意味します。つまり、地方が独自に活発な議論を展開することが難しい現状があるのです。

 例えば、一部の教員やそのチームが先進的な発想をもって努力したとしても、これが文科省の方針に示されたものでない限り、学校全体や地域全体の取組に発展しづらいという壁にぶつかってしまうことにもつながります。直接子供たちに向き合う学校現場こそが主体となって大いに議論できる環境の整備がいま最も重要なのです。

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