沖縄の学力③沖縄が創造するべき「本物の学力」

 

地方からチャレンジする重要性

文部科学省
文部科学省

 地方自治の本旨から言えば、国と地方は対等な関係であり、国が定める法令を土台に、地方は主体的な行政を行うことが求められます。しかし、こうした理想に反して、教育や学力についての積極的な議論が地方ではまだまだ弱いのが現状です。しばしば政治のリーダーが強く教育行政に介入しようとすることがありますが、必要なのはそうしたものではありません。重要なのは、子供たちに向き合う学校や地域の教育委員会が主体的にチャレンジしていくことです。これはまさに、地方自治の理念を目指したチャレンジでもあるのです。

学校や教育業界以外が参画する重要性

 教育や学力についての議論は、地方でこそ活性化していくことが重要ですが、さらに重要なのは、これが教育業界の枠を超えて、多様な主体に参画する開かれた場にすべきだということです。「本物の学力」とは何か。これからの社会を担う子供たちに身につけて資質・能力とはどのようなものか。これはまさに、これから社会全体が目指す理想像そのものを議論することに他なりません。あらゆる分野で成長し社会を担ってきた方々の「人材育成の知恵」を地域の教育に生かさない手はないはずです。

 換言すれば、まったく教育業界に携わっていない企業や個人であっても、子供たちに関わる何かしらの行動をとることが、地域の教育にとって非常に重要だということです。学校や教育委員会だけが地域との連携を志向するだけではなかなか効果が上がりません。教育業界にはいない方々のアクションにこそ、とても大きな可能性が秘められているのです。

沖縄が自ら創り上げる「学力」の可能性

 日本の教育は、知識や技能を中心とした一斉教育から、少しずつ進化しようとしています。新しい学習指導要領では、「生きる力」と銘打って、必要な知識・技能に加えて、「学びに向かう力・人間性」、「思考力・判断力・表現力」といったものを育むべき資質・能力として掲げています。こうした国で整理された理論を土台に、沖縄には沖縄の目指すべき「学力」があってもいいと思うのです。

 限られた予算と権限の中、しかも国(文科省)の方針の範囲内で新たな施策を打ち出し続けることは決して容易ではありません。しかし、沖縄には独自の文化や歴史が宝のようにあふれています。これらを生かした沖縄独自の教育実践のノウハウも、それこそ宝のように各地域に埋もれているはずなのです。学校だけでなく、学校の外にも、注目すべき「宝のピース」はたくさんあります。学習指導要領(=国の方針)という理論の枠に固執しすぎず、こうした沖縄ならではの「宝のピース」を集め、新しいオリジナルの学力像を創り上げる努力が、今まさに必要なのではないでしょうか。そして何より、「学力が低い」とレッテルを貼られ苦しんできた沖縄こそ、オリジナルの学力像を創造する原動力が大きいというチャンスを強く認識すべきではないでしょうか。

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