コロナ禍の1年半「沖縄観光の基盤は壊れ続けている」カヌチャ・白石武博社長インタビュー

 
レンタカーの配備台数は昨年と比べて4割減った

「一方で県は昨年GW期間中、来県自粛呼び掛け、いわゆる“来るなキャンペーン”はしましたが、休業要請などは出していませんでした。この時点で観光業界ではなくて、県外の人たちに向かってのみ発信したことで、多くの県民に対して『観光客=ウイルスを持ち込む主たる感染源』という誤ったメッセージを伝え続けてしまっている面があると思いますし、いまだにそのスタンスはあまり変わっていません。
 まずは科学的なデータを根拠として出すべきです。県が発表しているデータで計算してみると、県内の感染確認者のうち県外在住者の割合は、このコロナ騒動のスタートからいつまでたっても1%程度で推移しています。これが県外からの観光客だけが主たる感染源だといえるのでしょうか?観光客が感染源の数値が全体の20%という説を発信してた県の専門家もいましたが、どういう計算に基づくのかという納得のいく説明が不足しています。
 コロナ対策の優等生と言われた台湾のオードリー・タン氏が説いているように、きちんとしたデータを毎日出していくことで県民に状況を理解してもらう、という基礎的なことが県は全くできてないし、やろうとしてないう姿勢が最大の問題だと思います

規模別での細かな支援は必須

 —観光業への支援や補助の現状については。

「私は沖縄県レンタカー協会の会長もやっています。今年度の県全体のレンタカー配備台数は去年から約4割落ちています。結果的に今年の夏も緊急事態宣言が続いたので、台数が足りない事態にはなりませんでしたが、もし平常化していたら、レンタカーの供給不足は確実に沖縄観光のボトルネックになっていました。今後についてですが、各社もう増車をする気力も財務的体力も削られ切っています。いわゆる中小で一生懸命頑張ってやってきた事業者にはお手上げの所もあります。この窮状を昨年から県には訴え続けていますが、いまだに支援策はゼロです。これは観光バス、観光施設もおなじです。
 長期に渡る抑制・制限で観光関連事業者は壊滅的に傷つけられています。長きにわたって観光事業を営み、県経済を支えてきた企業に、また希望を持てるような形で観光業専用の補助制度をちゃんと設けてほしいと強く願います。例えばレンタカーだったら1台当たりで補助金を算出するとか。これは現状、公共交通機関ということでタクシーと路線バスには出ています。実際、コロナ対策の病床確保で医療には1床当たりで幾らの計算で補助が出ていますよね。
 もちろん、公共機関や病院と同水準にしろということではありませんが、『観光立県』を掲げている以上、観光産業をインフラとして支えている企業に対しては、規模に応じた支援は必要でしょう。
 飲食関係者の話だと、いま廃業の届けを出してる店はほとんどないそうです。なぜか。届けを出したら補助金がもらえないから。だから補助金がなくなった瞬間から廃業がたくさん出てくるだろうと。3ヶ月や6ヶ月ならまだしも、1年以上も続けば就業意識は削り取られるし、夢も削がれます。活力に満ちた繁華街という大きな観光のインフラの今後が心配です。さらに財政も悪化してますし、飲食業の営業縮小に対するバランスを欠いた協力金制度は問題だとおもいます」

「沖縄観光という大きな話をすると、本来は観光ってすごい夢のある仕事で、沖縄が自立するためには観光しかないと思って何十年も自信を持ってやってきました。
 高度成長期を支えた工業立国の地位はデジタル技術の進歩でアジアの国々に追いつき追い越されてきました。今後日本という場所を使って収入を上げて社会・経済を支えていくのは観光しかないと思っていましたので、観光庁の立ち上げのときも大喜びもしましたし、それをリードするのが沖縄県だと思ってずっと頑張ってきました。しかし、今の国・県のこの体たらくには正直幻滅し、怒りをおぼえます。
 昨年、今年と高校生の就職では、やはり観光に手を上げる人たちは激減していますし、そうならざる得ないのも分かる。このコロナ騒動による長期の抑制策の結果、営業縮小、休業や閉館に伴う雇い止めや内定取り消し、給与カットなど観光の働く現場にいる人たちには明るい話は一つもありません。企業としては生き残るためにもやむを得ない、苦渋の決断でそうせざるを得ない現状があります。観光業の根幹である人的資源の受け入れをめぐる影響が甚大であり、かつそこから沖縄観光という産業基盤が音を立てて壊れつつあるのは大きな問題です。何も施策を打たなければ、今後更に深刻化するでしょう」

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