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これからの子どもたちの「学び」に必要なこと 平田オリザさんが講演
- 2021/9/5
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「身体的文化資本」の格差
続く講演では、変革が進んでいる大学入試に言及しながら、初等教育の段階からクリエイティブなものに触れることの必要性と演劇との関係について語り、都心部と地方との文化的格差や沖縄県の文化芸術のあり方についても提言した。
「日本の学校ではクリエイティブな授業が極端に少ない」と平田さん。フィクションを書いたり考えたりする機会もなく、作家になるような人間からすると「日本の授業は退屈でしょうがない」と“ダメ出し”する。
現在、大学入試がこれまでとは違った主体性・多様性・協働性という3つの要素を問う内容に改革が進んでいることにも言及。その上で、初等教育からクリエイティブな物事に触れることで育まれる「身体的文化資本」の重要性を説く。
身体的文化資本とは、美的感覚や感性、コミュニケーション能力などを含めた、いわゆる「センス」という言葉が持つニュアンスに近いもので、人生の早い段階で「身についてしまうもの」だという。
身体的文化資本を磨くには「色んなジャンルの『本物』、本当に良いものに触れ続けるしかない」。しかし、そうなると演劇やダンス、オーケストラやオペラなどの文化芸術を生で体験するには東京が圧倒的に有利になってしまうのが現状だ。
地方でも頑張ればできることもあるが、全国的に高校で文化芸術関連のコースすら開設できないこと、さらに沖縄にはプロオーケストラもないことなども触れて、以下のように問題提起した。
「教育と生活の格差も大きな社会問題としてありますが、文化の格差は発見すらされないんです。インターネットで知識や情報の地域間格差がなくなった一方で、本格的な舞台芸術を鑑賞する機会の地域差はとてつもなく大きくなっています。そしてこの格差は大学入試に直結するのが現状です。地方ほど子どもたち1人1人に身体的文化資本がつくような教育改革をしなければならず、それ以外のソリューションはありません」