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これからの子どもたちの「学び」に必要なこと 平田オリザさんが講演
- 2021/9/5
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「イギリスやアメリカなどの先進国には、学校教育の中に演劇が選択必修科目としてあります。韓国もすでに5~6年前に採用しました。日本はアジアの中でも遅れをとっています」
淡々としつつも、時折熱が入り手振りをつけながら話す劇作家・演出家の平田オリザさんの言葉に、集まった観客は真剣な面持ちで耳を傾けた。
7月25日、那覇市のアトリエ銘苅ベースで平田さんを招いて行われた、子どもたちの「学び」と「演劇」についてのワークショップと講演会。会場には主に沖縄県内の演劇関係者や幼児教育関係者が訪れた。イベントは入場者数を制限をした上で、消毒や座席間隔も配慮するなどの感染対策を行なわれた。
「コミュ力」は“使えるようにする”
希望者25人が参加したワークショップは、平田さんが普段から各地で行っているコミュニケーション学習のプログラムだ。「好きな色」や「果物」「沖縄」といった言葉から連想する言葉を参加者が口に出して言い合い、同じ言葉を連想した人同士でグループを作っていくという一連のプロセスを何度か繰り返す。「何かしらの共通点が見つかる」ということが緊張や警戒心を解していき、ディスカッション学習などの導入で行うと、発言率が目に見えて上がるという。「友達を作るきっかけになることもあり、たくさんの小学校の先生に使ってもらっています」と平田さん。
現在の日本の教育は「心と体と言葉の結びつきを教える授業が極端に少ない」ことを指摘する。同じ日本語でコミュニケーションをとっていても、話している人たちの間では、話していることのイメージがちぐはぐの状態で会話しているのが現状だという。そんな中で「価値観がバラバラなままでもどうにか上手くやっていく方法」として、演劇が一助になると説明する。
「コミュニケーションの中での“伝え方”の1つとして演劇が有効に機能する場面があります。よく『コミュニケーション能力を高める』という言い方をしますが、そうではなくて、コミュニケーション能力をどんな場面でも“使えるようにする”ことが重要なんです」
協働性を体に染み込ませる
その上で、パフォーマンス向上を目的に複数人で取り組むための「協働性」を育む手法として、演劇の要素を取り入れたワークショップが有用であることを示し、実際の体験を積み重ねていくことで「体にしみ込ませていくしかないんです」と強調した。
ただし、ワークショップは「ただやればいいというわけではない」。例えば学校現場では、教員と子どもという権力関係において、実施する大人側が“無意識の加害者”になりうるということにも留意する必要性がある。その上で最も忌避しなければならないのはワークショップをやること自体が目的となってしまうことだという。
「自己主張の強い欧米型をベースにした身体性の高いワークショップは、新興宗教やカルトにも使われている例もあり、あっけなく洗脳されることもあります。こうした部分にもきちんと配慮しないといけないし、自己目的化することも良くない。教育はちょっとずつしか良くならないんです。それを手助けしていくのがファシリテーター(進行役)の役割です」