菅義偉首相と沖縄 突然の退陣で県内政局への影響は

 
会見する菅義偉首相 首相官邸ホームページより

 菅義偉首相が新型コロナウイルス対策に専念することを理由に、自民党総裁選への不出馬を表明した。官房長官時代から沖縄の政策を取り仕切ってきた菅氏の退陣は県内政界にも波紋を広げ、11月までに実施される衆院選への影響は必至となっている。

沖縄への強いこだわり

 新型コロナウイルスの影響で在任中の沖縄訪問はなかった菅首相だが、2012年12月~20年9月までの官房長官時代には足繁く沖縄に通った。官房長官と沖縄負担軽減担当相を兼任し、政権トップの安倍晋三首相に代わって基地問題や振興、選挙など沖縄政策を実質的にグリップした。

 「普天間問題でつまづいた民主党政権がまさに反面教師。同じ轍は踏まぬよう、目に見える形で沖縄の政策を前に進めるという姿勢は一貫していた。保守とリベラルで評価は分かれるとしても、沖縄にこだわりを持ったという見方に異論はないのでは」。元県幹部は菅氏の姿勢をそう振り返る。

 那覇第2滑走路の工期前倒し、沖縄振興予算の3千億円台確保、KC130空中給油機の岩国移駐、沖縄の本土復帰後最大規模となる北部訓練場の過半返還などはまさに「目に見える形」の代表的な実績だろう。名護東道路の延伸や沖縄市のアリーナ建設のほか、国道58号線の浦添市内での拡幅や沖縄都市モノレールの3両化にも関心を寄せ、事業化に道筋をつけた。こうした「菅案件」「菅銘柄」などと呼ばれた沖縄政策は多くある。

首相官邸ホームページより

 振興に力を入れつつも基地問題では沖縄県側との対立が強まり、菅氏の手腕はマスコミ報道で「アメとムチ」と評されたが、安倍政権の路線を継承した菅首相の退陣で「安倍一強」時代は終焉を迎える。次期政権では仕切り役が代わり、沖縄との向き合い方もおのずと変化せざるを得ない。

 県内経済界では、官房長官時代から菅氏が酒税などの軽減措置、沖縄振興開発金融公庫、高率補助といった特別措置の存続に理解を示してきただけに、突然の退陣を惜しむ声も多く、自民党総裁選の行方に気を揉む。

焦点の沖縄1区

 これまで内閣支持率の下落が続いていたことから、菅首相を「選挙の顔」に衆院選を戦うことには、県内の自民関係者の間で不安が漂っていた。自民関係者は菅氏の不出馬表明について「英断と受け止めるが、世論がそう受け止めるか、責任放棄と捉えるかはまだ読めない」と語る。

 沖縄県内の4選挙区のうち、関心を集めるのは1区への影響だ。

 「安倍政権が終わり、菅政権が終わったらまさに新しい展開が生まれてくる。今までの歴史とは違う新たな一歩がスタートするかもしれない。決して全てが継続にはならない。そのチャンスをどう沖縄県が生かしていくかだ」

 4日朝、下地幹郎衆院議員(60)は那覇市内の恒例の朝の街頭演説で、いの一番に菅氏の不出馬に触れた。下地氏は次期衆院選に向け自民復党を探るが、当選同期で懇意の菅氏が政権を退くことが、復党の行方を占う上で新たな変数となった。

 自民の国場幸之助衆院議員(48)は、総裁選に出馬する自派閥領袖の岸田文雄前政調会長(64)を支援すべく、早速活動を始めている。「岸田首相」で次期衆院選に弾みをつける道筋を描く。沖縄北方担当相の経験があり、党の美ら島議員連盟会長も務める岸田氏は4日、沖縄県議らとリモートで意見交換した。

 沖縄1区では、下地、国場両氏がしのぎを削って保守分裂選挙の様相を呈し、共産党の赤嶺政賢衆院議員(73)が漁夫の利を得る形で当選を重ねてきた。経済界を中心に保守系候補一本化の必要性が叫ばれているが、「ボールは党本部にある」(県連関係者)状況から動きはない。復党に向けて下地氏が新規党員の名簿を提出し、望みをかける二階俊博幹事長(82)も、次期総裁下での処遇が不透明な情勢だ。政局が揺れ動く中でタイムリミットが迫っている。

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