歴史あり、パワースポットあり、知られざる「奥武山」

 

琉球王と呼ばれた奈良原繁

 護国神社の裏側も小高い山になっており、そこには廃藩置県後の沖縄土地・租税制度改革である「土地整理事業」の完了を祝った「改租記念碑」が建つ。この事業を推進した人物が、「琉球王」と呼ばれた鹿児島県出身の第4代沖縄県知事・奈良原繁である。

 廃藩置県を経て、それまで大きな問題であった人民の貧富の差を改善すべく進められた事業だったはずが、明らかに不公平な施策や高級士族および本土商人たちの賄賂による土地買収などが行われ、格差がますます広がってしまう実情があった。
 土地整理事業主任を担っていた平民のヒーロー、東風平謝花こと謝花昇は、奈良原繁に楯突き抵抗を続けるも、不当な扱いを受け、遂に担当まで外されてしまう。

 その後県職を辞した謝花は、直接明治政府に対しても奈良原県政の是正を訴え続けるのだが、最終的にノイローゼ気味となり、44歳という若さでこの世を去ってしまった。
 ちなみに東風平グラウンドには謝花昇像が建てられているのだが、像まで上る階段の数が享年を偲ぶ44段となっており、地元の人の謝花愛が感じられる。

東風平グラウンドに建つ謝花昇像

 実は改租記念碑建立時、その隣には奈良原繁の銅像も建っていた。しかし軍事体制下における金属回収対象となり、供出されたという。ただ、巷では県民の感情を考慮して銅像を下ろしたのではないかという声も聞こえたりする。奈良原繁像は現在無くなっているものの、銅像が建っていた台座だけは残っており、その異様な姿が謝花との因縁を今に訴えているような気すらしてくる。

かつて奈良原繁像があった台座。今は神様が祀られている

 小さな島に、これだけ深い歴史やスピリチュアルスポットが詰まった奥武山。次回訪れる際には、このような部分にも触れ何かを感じ取ってもらえたらと思う。

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