医療現場は「ずっと疲弊し続けている」 若年層の感染者増加に危機感

 

医療従事者のジレンマ

 そのほかにも気がかりなことは多々ある。その1つが、医療現場の逼迫した状況を現場で働いている人たち自身が自らの言葉で発信できずにフラストレーションを感じていることだという。

 厳しい現状を晒してしまえば、患者や市民に不安を与えてしまったり、病院の選別や来院者数などに影響が及んでしまうことがあるため、それらを考慮して基本的にほとんどの病院が現場からの発信を抑制している。現場の大変さを伝えることで、感染防止についての意識向上を呼びかける面もあるが、いたずらに不安を煽るわけにもいかず「医師の中には、ジレンマと戦っている人も多いんじゃないかと思う」という。さらに「忙しかったり疲労困憊して情報発信をしている時間もない、という実情もある」と付け加えた。

 医療従事者の中からは、若年層の入院者が増え続けている現状に対する強い危機感から、SNS上で所属・実名を明らかにした上で、原因には居酒屋での飲食があるとみられることを指摘し「当事者意識が欠如しているように感じる」と警鐘を鳴らすことが増えてきている。「忙しかったり疲労困憊して情報発信をしている時間もない」医療従事者も多いが、訴えが出てくるまでに状況が逼迫してることの証左でもある。

 前出の医療従事者の男性も「若年層の感染者増加は、やはり同年代同士で集まって飲み食いしていることが一因としてあると思う」と指摘する。「感染した時には大体みんな『まさか自分が』という感じで、後ろめたさもあって飲み会が原因ということを言わない人もいるので、経路不明の中にはおそらく一定数そういう人たちがいるんじゃないか」

 現場での感覚や雰囲気については「42.195kmのフルマラソンと思ってゴール近くまできたら、実は100kmウルトラマラソンで、それももしかしたら100kmでは終わらないかもしれない。けれど、増える感染者に呆れつつも頑張り続けているようなもの」と表現する。ただ、これから徐々にワクチン接種が広がれば「7月、8月くらいにはある程度落ち着いてくるんじゃないか」と説明し、「何とかやり遂げるしかない」と語った。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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