「次期振計策定に向け空港強化を訴え続ける」那覇商工会議所・石嶺会頭インタビュー

 

人流と物流は整理が必要

――空港の発展のためには、民間の発想も必要ですね。

石嶺会頭 その通りです。いずれ民営化の議論も必要でしょう。沖縄県ではこれまでもターミナル民営化を検討する動きもありましたが、いまはコロナの問題もあり話が前進していません。しかし、全国の空港コンセッションで見られるように、滑走路との一体的な民営化で着陸料や駐機料を柔軟に設定して、海外のエアラインを誘致しなければお客さんはやって来ないと思います。民営化した他の空港では誘致の専門チームを設け、コロナ前までは積極的な営業を展開していました。行政任せの誘致ではなかなか限界があります。

 なお、県庁では地理的に近い東南アジアを中心に誘客すべきだという議論がありますが、むしろ我々が狙うべきは観光客数の増加ではなく、落としてくれるお金を増やすことでしょう。観光の質の転換です。

 そのためには、LCC(格安航空会社)を中心とした近隣のアジア各国からの誘客だけではなく、欧米の遠いところからの誘客も大切ではないでしょうか。菅義偉首相のブレーンであるデービッド・アトキンソンさんは、「遠い国から来た客ほど金を落とす」という趣旨の発言をされています。例えば、オーストラリアにはニュージーランド以外に隣国がない。日本に行くにしても十数時間かかります。遠い国からくるお客さんは長い期間そこに滞在しますよね。私たちがヨーロッパに行くにしても、2、3日で帰ってくる人はない。少なくとも1週間はいますよね。我々としては、欧米やオセアニアからお客さんを呼んで長期滞在してもらい、お金を落としてもらう仕組みも考えなければなりません。

――石嶺会頭は那覇空港の機能強化を起点とした西海岸全体の開発を訴えてきました。

石嶺会頭 那覇空港の隣には那覇軍港があります。さらに北に行くとキャンプキンザー。この西海岸の一体的な開発が必要だと思っています。いずれ軍港が移設され、キャンプキンザーの返還も実現するとなると、跡地開発を含め西海岸全体の開発の中で那覇空港を位置づける必要があります。それは我々も県にすでに要請しているところです。 

 富裕層向けのクルーズ船誘致に加え、スーパーヨットが停泊できる仕組みも考えてはどうでしょうか。ただ、いまの計画では、物流と人流がごちゃごちゃになっています。これからの議論になりますが、同じ地域で、物流もいかす、人流もいかすではなく、例えば、西海岸は基本的に人流中心にして、東海岸は中城湾港を中心に物流の中心となるというように、棲み分けも議論していく必要があります。

 いまの那覇港は、大型のガントリークレーンがあってトレーラーが行き来する横にクルーズ船が停泊してお客さんを降ろしている。これでは「世界最高水準」のリゾートとは言えません。来年は沖縄の本土復帰50年です。コロナ禍への対応はもちろん待ったなしですが、沖縄のグランドデザインを描く努力をここで怠るべきではありません。

いしみね・でんいちろう 1949年生まれ。那覇市出身。琉球大学法文学部卒業後、琉球電力公社(現沖縄電力)入社。同社副社長、社長、会長を歴任し、2019年に相談役。会長在任中の16年から那覇商工会議所会頭。

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