空手と江戸上りとの推論 沖縄空手の世界⑧

 

琉球と薩摩の護衛官が本土と武術交流?

 沖縄県空手古武術無形文化財保持者で沖縄伝統古武道文武館の仲本政博先生と取材でお会いした際、「江戸上りに参加して江戸に行った人材は若い人物も護身術を身に着けていた。言葉も日本語、中国語、朝鮮語も学び英才教育されたエリートで、武術や大砲と銃の打ち方も教わっていた」と聞きました。

 江戸上りには護衛官ともいわれる、今でいう警護人、ボディガードも同行しており、琉球に加え薩摩の護衛官もいたといいます。薩摩には示現流(自顕流)という剣術の武術があります。薩摩の護衛官はこの示現流(自顕流)の使い手であったのかもしれません。

 琉球と薩摩の護衛官は、江戸上りの工程途中で本土の剣術や柔術家と交流したことがあったかもしれません。更に、琉球に戻らず本土にとどまり手を伝えた人物もいたかもしれない。又、手(ティー)の技術や歴史を伝え残した文献資料があったかもしれない。手(ティー)を志す者は他人には知られないようにする習わしもあり、先の比嘉金松と金城真三良は武術を身につけていることを江戸上り中に語らなかったことも想像できます。

 今回ご紹介した三名の空手家。江戸時代、幕末に海を渡り本土に来た三名の足跡を調べることは空手の歴史に新たなる発見につながることでしょう。

参考文献
「沖縄空手古武道事典」柏書房 2008年
「沖縄伝統古武道」仲本政博著 2007年
「江戸上り 琉球使節の江戸参府」沖縄県教育委員会 2001年
「琉球の江戸参府」沖縄美ら島財団 2018年

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