注文殺到!紅型マスク1日200万 早急なコロナ対応で前年比10倍に
- 2020/5/29
- 新型コロナ・医療
先日ネットで新型コロナウイルス感染拡大により「売れた」「売れなくなった」商品ランキングが話題になった。「売れた」商品の上位には予想通りマスクの存在があったのだが、「使い捨てマスク」だけが売り上げを上げたわけではなかった。
うるま市の「つは琉球店」は、琉舞衣装店を営む「津波三味線店」のオンラインショップ。新型コロナウイルス感染拡大を受け「紅型マスク」を新たに商品として開発、販売を行なった。それにより通販部門の売り上げ前年比10倍超えという実績を生み出すことに成功した。
今回、その詳細についてオンライン事業部・店長の津波千明(つはちあき)さんに話を伺った。
衣装店の強みを活かした紅型マスク
つは琉球店は、うるま市でおよそ70年もの間営んできた老舗店の津波三味線店の商品をオンラインで販売してきた。その商品ラインナップは琉球舞踊やエイサーの衣装、三線など、いわば沖縄独自の伝統芸能関係商品であり、県内で活躍する演者をメイン顧客とした店である。
通販部門がスタートしてからはおよそ20年ほどになるが、基本的には店舗で取り扱う商品を販売する形での運用だった。2019年9月、当時の店長が退職したことを機に、社長の姪にあたる千明さんが店長に就任。
就任以来「ずっと専門的なものを販売しているのでは、需要が狭くなっていく」と感じていた千明さんは、新しいアイデアを出そうと奮闘してきた。
その考えがあっての新型コロナウイルス感染拡大だったため、紅型マスク販売は当然といえば当然の流れだったのだろう。衣装店ならではの豊富な素材を活用し、すぐに紅型マスクの生産を行なった。
衣装店を強みとしたマスクは、沖縄を象徴する紅型を使用した可愛らしい柄でありながらも、マスクとしての機能性を果たしてくれる不織布を使用し、作られた。
不織布(ふしょくふ)とは、フェルトのように繊維を絡み合わせてシート状にしたものだ。不織布マスクはこの不織布を不織布と何枚か重ね合わせ、あるいは一枚を立体的に成形して作られている。(一般で使用される不織布マスクは、医療用のサージカルマスクとほぼ同じ効果があるとされる)
”紅型マスク”がバズ?!「何通も通知が来て、なにがなんだか」
千明さんは2月、アイデアが浮かんですぐに準備をはじめた。販売開始となったのは、3月28日。通販と店舗で同時に販売を開始した。そして4月14日、新聞掲載がきっかけとなり、一気に注文が殺到した。
朝刊が配られてすぐから電話はひっきりなしに鳴り、店舗に人が殺到することを懸念して、店舗販売はすぐに停止した。通販、電話などすべて合わせて3〜4時間で248件の注文が入った。突然の鳴り止まぬ電話と通知に驚いた千明さんは、数と種類の把握が間に合わず、一時的にソールドアウトにし、製作に取り掛かったと話す。
「実はYahoo!ニュースなどにも取り上げられたらしく、県外からの注文も殺到しました。全体の注文の8割は県外の人でしたね。」
この“バズ”には第二波があった。それは沖縄県知事である玉城デニー氏がネットで『マスクがかわいい』と話題になった時のことだ。これにより、”紅型マスク”の検索数は急上昇。
当時、紅型マスクを販売する業者も増えてはいたものの、比較的早い段階で販売を開始した同店のページが、「紅型マスク」キーワードで検索1位を獲得していた。その効果もあり、1ヶ月間の間、注文が殺到した。
当時の心境を伺うと、「怖かった」という千明さん。
「突然電話はなりっぱなし、通販の通知もなりっぱなしで怖かったです。何が起こっているんだろうと思いました。」
いわゆる「バズ」状態が長らく続き、ひっきりなしに入る注文に混乱しながらも、1ヶ月間必死でマスクを作り続けた。なんと1ヶ月に1万枚以上ものマスクを販売したそうだ。1日の売り上げが200万円を超える日もあった。
-前年と比べて、通販売り上げは上がったんでしょうか?それとも普段からそれだけ売り上げはあったのですか?
「前年比を計算すると、10倍を超えていました。衣装の売り上げの方は、通常だと3、4月はイベントが多くて衣装の発注が増えるはずなのですが、今年はコロナの影響で激減しました。」
-例年より通常商品の売り上げは下がっているにも関わらず、前年比が10倍というのはすごいですね。売り上げ的にもかなりの増額ですが、客層も広がってそうです。
「そうなんです。今まで県外のお客さんはほとんどいなかったし、商品が商品だけに、一般のお客さんはほぼいませんでしたから。あと、1度購入してくださったお客さんから“良かったからまた注文したい”とご連絡いただくことが多くて、これまでは取り込めなかった県外のリピーターさんができたことも、とてもありがたいことです」
-リピーターも増えたんですね。しかも良かったという声が直接届いたり再注文に繋がるということは、期待を上回る商品だったように思います。
「はい。有難いことに、値段の割に生地がしっかりしててマスクとしても機能性が高い、と言っていただけています。平均して一人当たり3〜4枚くらい買っていただいてますね。今も入荷待ちの人が800人くらい待っている状態が続いています」
お客からの購買理由を尋ねると「沖縄に旅行予定だったけど行けなくなったので、沖縄を感じたかった」という県外在住者と、逆に「沖縄に友達が帰ってこれなかったから、送ってあげたい」という県内在住の方が主だったようだ。
外出自粛時の需要を満たし、商品の品質で感動させ、リピートに繋げた紅型マスクが売れたのは、ただタイミングが良かったわけではないだろう。
マスクによって認知の機会を得た「つは琉球店」。これを機に伝統芸能に興味を持ってもらえればと話した。