新型コロナの影響が有効求人倍率にも反映
- 2020/5/31
- 経済
沖縄の有効求人倍率が1倍を切った。
有効求人倍率とは、企業からの求人の数を求職者の数で割った値のこと。5月29日に沖縄労働局が発表した「労働市場の動き」によると、今年4月の値は前の月から0.15ポイント低下して、0.91だという。1倍を切ったということは、企業からの求人の数より仕事を求める人の数のほうが多くなったということだ。
沖縄県はインバウンド客の急増を受けて観光業を中心に好景気が続き、有効求人倍率が1倍を超える状態が続いていたが、2016年9月以来、3年7か月ぶりに1倍より低くなったことになる。前の月より0.15ポイントも下がったことも深刻だ。これほどの下げ幅は、復帰前の1969年8月にあって以来という。
この事態は言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大によるものである。
3月の有効求人倍率も前の月より低下したが、それでも1.06倍あり、下げ幅も0.05ポイントにとどまっていた。3月下旬から沖縄県内で感染者数が急増したが、それと軌を一にするように、有効求人倍率も急速に悪化した形だ。
沖縄労働局も「沖縄の雇用情勢は、新型コロナウイルス感染症の影響により、新規求人数が大幅に減少して求職超過となり、宿泊業・飲食サービス業を中心に厳しさが見られる」とコメントしている。
影響は十分に予想されていたが、こうした数字を見ると、あらためて深刻ぶりがわかる。
前年同月比75.4%減
企業からの求人を産業別に細かく見ていくと、あらゆる産業で求人数が減っているが、やはり観光と直結する宿泊業・飲食サービス業の落ち込みが目立つ。県内の宿泊業・飲食サービス業の求人は、昨年4月に1,598人あったが、今年4月では385人しかない。75.9%もの減少であり、4分の1以下に落ち込んでいることになる。情報通信業も946人から377人に、卸売業・小売業も906人から579人と、大きく落ち込んでいる。
県内に5つあるハローワーク(公共職業安定所)別に見てみると、名護所や宮古所、八重山所では1倍を維持しているが、那覇所と沖縄所では1倍を切っており、とりわけ沖縄所では0.78倍しかなく、本島中部の景気の冷え込みが懸念される。
職業別の有効求人倍率を見ると、前年同月比を上回るのは、福祉関連職業のみ。事務的職業の有効求人倍率は0.49倍、運搬・清掃等の職業で0.60倍、IT関連産業で0.66倍しかない。
失業率も大幅に上昇
有効求人倍率の低下に伴って失業率も上がっている。沖縄県の労働力調査によると、今年4月の値は3.4%。前年の同じ月より0.9ポイント上昇した。この値は2018年10月以来の高さだ。とりわけ男性の失業率は、4.0%と高く、前年同月に比べ1.2ポイントも上がった。
このままでは、求人の減少と失業率の上昇が同時に進み、下り坂を転がり落ちるように県内の雇用情勢が悪化しかねない。しかし、観光業を中心ににわかに回復を見込める要素がほとんどないのも現実だ。観光客が沖縄にまだまだ先のことだ。沖縄観光コンベンションビューローが、4月から7月までの観光客数は前年比87%落ち込むと予測しているとの報道もあった。
国や沖縄県など行政にはぜひ強力な経済対策が待たれる。