那覇軍港返還は実現するのか 次期沖縄振興計画骨子案に軍港活用案の危うさ

 

 しかし、13年2月、今度は軍港移設反対を掲げる松本哲治氏が浦添市長選で当選したことで、計画はいったんストップする。松本市長は15年に移設容認に転じるものの、軍港を移設協議会が議論してきた浦添埠頭地区内の北側ではなく、南側に配置する独自案を提唱し、沖縄県、那覇市との足並みがそろわない状態が続いた。

 足踏み状況が一転したのは去年8月。防衛省が松本市長の「南側案」では軍港配置に技術的な問題が生じるとして、これを採用しない考えを伝達すると、松本市長がこれを受け入れる形で国、県、那覇市、浦添市の方針が一致。従来の「北側案」でよくやく決着した。

移設容認の玉城知事がちゃぶ台返し?

 ところが、である。今度は移設を容認していたはずの玉城知事が去年10月10日、県庁で沖縄問題を担当する加藤勝信官房長官と会談した際、「那覇軍港は遊休化している」として、浦添市の代替施設の完成を待たずに「軍港の先行返還」を求めたのだ。加藤長官は、「遊休化していない」との認識を示した上で、「返還条件を満たすよう進めていくことが返還に向けての早道だ」と述べ、「先行返還」を否定した。

沖縄ニュースネット
那覇軍港

 那覇軍港の返還は、2013年4月に日米が合意した統合計画に基づいている。浦添埠頭地区内49ヘクタールを埋め立て、代替施設を15年かけて完成させ、28年度以降に軍港の移設と返還が実現する段取りだ。

 移設をともなわない「先行返還」は合意をひっくり返すような話で、かつて翁長雄志氏が那覇市長時代、「移設と切り離して返されるべきだ」と訴えた8年前の状況に逆戻りしてしまう。

 ある県庁元幹部は、「軍港移設の問題から県民の目をそらせたいのが知事の本音ではないか。振興計画は国の同意がなければ策定できない。先行返還を前提とするようなバラ色の跡地利用を骨子案に盛りこんでも非現実的だ」と話す。

 玉城知事の支持層には、辺野古の移設と同様、那覇軍港の移設に対する反対論が強くある。国からの埋め立て申請を県が承認し、海を埋め立てて施設を整備する流れは那覇軍港も普天間飛行場の移設も変わらない。

 県知事を先頭に辺野古反対でまとまってきた「オール沖縄」勢力は、那覇軍港問題で一枚岩になることができない現状が知事の姿勢の背景にある。玉城知事を支持する県政与党の二大勢力である共産、社民両党は軍港の移設計画に反対している。

跡地利用計画、港湾計画との整合性はどうなるのか

 だが、移設と跡地利用は切り離せる問題ではない。2013年に日米が合意した統合計画で移設の時期は「2028年度またはその後」とされているが、その「いつ」かが決まらなければ、最終的な跡地利用計画がつくれない。

 那覇市は1995年度に「跡地利用計画基本構想」をまとめ、以後、毎年度地主との合意形成に向けた活動調査を行っている。次期沖縄振興計画が軍港跡地の活用を軸とするのなら、移設先の位置や時期を明確にした上で、この跡地利用計画を反映させる必要があるのではないか。

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