なぜ沖縄は貧しいのか(3) 教育が未来をつくる〜「エンカレッジ」① 理事長に聞く

 

 坂さんは「沖縄の子どもたちは『コンフォートゾーン』から抜け出さない、抜け出せない傾向にある」とも指摘する。
 コンフォートゾーンとは「安心感があり居心地が良い場所」という意味で、慣れ親しんだものに触れている時にリラックスすることができる心理領域を指す。一般的に成長や停滞からの脱却を目指すためには、コンフォートゾーンを出たところに身を置かなければならない。
 「子どもたちには可能性がものすごくあるが、親や周囲の環境などによってフタをされてしまっている状態。その中では、本当はもっと高められるのに『ここでいいや』という心理状態になってしまうために、滞った状況が続いてしまうことになる」

「改善の実感はない」

 「これまで支援に携わってきて、正直言って社会的な状況が改善した実感はあまりない。支援してきた個別の子どもたちの成長は目に見えるが、沖縄社会全体に目を向けると貧困問題の解決や状況改善にはまだまだ遠い」

 文部省の統計によると、2015年に沖縄県で就学援助を受けた小中学校児童生徒数は約3万人で全体の20%程度。坂さんは「この数もあくまで制度につながっている分で、両親が意識的でなければ、我々のような学習支援をやっているところにたどり着かない」と指摘する。坂さんの試算では、県内の0~18歳の人口を考慮すると支援が必要な子どもたちは8~10万人に達するという。

 「エンカレッッジに通っている児童生徒の数が今で大体900人くらい。支援の手が圧倒的に足りていない。量的な部分が要因としてとても大きい」

継ぎ目のない支援、学校との連携

 子どもたちの教育を支えるためには、福祉・社会の分野も含めた多面的な支援が不可欠となる。坂さんが主張するのは「継ぎ目のない支援」だ。小中学校、高校、大学など年代やライフステージで区切らず、小学校から社会人になるまでの期間を「縦」に捉えた視点で、どれだけ支援を充実させていけるかが課題という。

 「小中で支援しても、手を離れた後に高校生になってアルバイトをしたりする中で、周りの環境に流されることも多々ある。さらに、高校になると妊娠するケースも出てくるため、そこまで想定した対策を考えることも必要」

 加えて、学校現場での対象把握が支援の入り口として重要と強調し、協力の道を模索している。
 「特に小学校では、先生1人が児童30~40人をつぶさに見ていくことは非常に大変で厳しいと思う。しかし支援の対象者はみんな学校に行くので、その現場で把握することが大事になってくる。民間で手伝えることを協力しながら取り組んでいくことが、子どもたちにとっても、沖縄の未来にとっても良いことになると考えている」

 また、子どもたちの多様化に合わせた居場所作りも構想中だ。主な事業は学習支援ではあるが「評価の軸を勉強のみにしていいのか」という思いから、様々な職種の人たちが働くシェアオフィスで、子どもたちが遊んだり仕事を手伝ったりしながら、社会に直接触れられる場所の設置を考えている。

 「学校以外で働いている大人を見ることで、自分が今何者なのかを感じたり考えたりしながら、自発的な学びや気付きがあるような場を築けたら良いと思う。勉強ももちろん大事だが、自分の将来の選択肢を増やしていくことも大事。そうしたことも踏まえながら、今後も新しい学習の形を模索したい」

<NPO法人 エンカレッジ>

https://www.enc-ok.jp/#gsc.tab=0

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