不妊治療 助成拡充で負担軽減なるか 国は保険適用拡大方針
- 2020/11/28
- 新型コロナ・医療
また、不妊を心配する気持ちはあるが治療をしたことがない人の理由として「経済的な負担が心配だから」と答えた人が多いという結果も出ている。さらに、国が実施している治療の助成金については、申請をしたことがない人が約6割となっており、その理由として「所得制限を超えるから」というのが最も割合が高く、次いで「治療が助成の対象ではないから」が多かった。
前述した通り、妊娠の確率を上げるために治療を高度化していけば、支払う費用も嵩む。生まれてくる子どものために貯めていた貯金を不妊治療に充てたり、体外受精にステップアップするための費用を捻出するために治療を一時的に休んで働くケースもある。また、国の助成についても、所得制限をわずかに超えて受けられない夫婦にとっては、経済的負担が重くのしかかっているのが現状だ。
治療のため16%が離職
厚生省が2017年に実施した赴任と仕事の両立についての調査では、不妊治療をしたことがある人のうち、16%が「仕事を辞めた」と回答した。8%が雇用形態を変更している。仕事と治療の両立について、半数以上の53%は「両立できている」としているが、それでもそのうちの8割以上が「両立は難しい」と回答しており、主な理由として「通院回数が多い」「精神面で負担が大きい」「待ち時間など通院時間にかかる時間が読めない、仕事との日程調整が難しい」といったことが挙げられている。
不妊治療のことを職場に伝えている人の割合は38%にとどまっており、「知られたくない」「気遣いをしてほしくない」といった理由が並ぶ。
こうしたアンケートや調査分かるのは、不妊治療についてのさまざまな方面からの理解が未だ不十分であるということだ。
保険適用の拡大や助成制度の拡充は治療に臨む当事者にとって、大きな支援になることは間違いない。しかし、治療がどれくらいの期間続くのか、どれくらいの費用がかかるのか、精神的な忍耐がどれだけ続くのかなど、当事者それぞれで個人差があり不確定要素も多い。経済的な支援はもちろんだが、支援をきちんと行き渡らせるためには、不妊の問題について社会全体が理解を深めていくことが不可欠だ。