支援を1人でも多くの被害者に(3) 全国の施策実施状況

 

 総合的対応窓口は全国横並びで全ての都道府県に設置されているが、被害者支援についての条例・計画などの制定や策定は都道府県、市区町村によってまちまちだ。沖縄県の市町村は条例の制定、計画の策定ともに0%で、さらに見舞金・貸付金制度の導入も0%となっている。他の都道府県市町村で、この4項目が0%なのは、青森、岩手、山形、福島、鳥取の5県。警察白書によると、2019年の刑法犯認知件数はそれぞれ青森が3,488件、岩手が3,063件、山形が3,275件、福島が9,416件、鳥取が2,029件、沖縄が6,514件となっている。認知件数の全てが支援を必要とする被害者を生む犯罪であるとは限らないが、青森、岩手と比較すると人口規模では十数万人の差にも関わらず、沖縄の認知件数がほぼ倍に近い数字であることからも、県や市町村独自の被害者支援体制整備は急務だと言える。

 沖縄県は2004年に施行した「ちゅらうちなー安全なまちづくり条例」の中に「犯罪被害者の支援に関する指針」を盛り込んでおり、被害者への情報提供やカウンセリングの実施などの項目が定められてはいるが、上記で見てきたように、県内市町村で具体的な施策を進めるための条例制定や計画策定はゼロ。各種支援事業の実施や予算要求の根拠とするためにも、早急な条例の制定が待たれる。

全国では経済的支援策も

 一方、全国に目を向けると、東京都では今年4月に「東京都犯罪被害者等支援条例」が施行され、条例制定を機に今年度から法律相談費用、転居費用の助成、見舞金給付などの経済的支援が実施されている。2019年に条例が施行された三重県では、予算措置が大幅に拡充されたことで、見舞金やコーディネーター配置といった新規事業の創設が可能となった。
 また、政令指定都市では、横浜市が2019年に条例施行し、その具体的支援として家事介護ヘルパー費用、一時保育費用、転居費用の助成、見舞金支給、弁護士による法律相談などを予算化して実施している。2011年に条例施行している京都市では、「観光旅行者等に対する支援」(第15条)も規定されており、外国人が被害者となった場合には通訳を派遣する事業も実施。支援の対象を市民に限らず、観光客が多く訪れる地域特製を踏まえた規定となっている。

 ただし、全国でも市区町村単位で見れば条例が制定されている割合は32.4%、計画の策定は6.4%と非常に低い水準にとどまっており、支援策拡大の動きを加速させていかなければならないのが現状だ。

 全国の犯罪被害者等施策に関する情報は警察庁のHP(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/index.html)で確認できる。

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