食品を直接消毒で県物流“世界的優位性”を 津梁貿易の金城拓真氏が提言

 

 そこで金城氏が目を付けたのが、もともと食肉や農作物などにも直接利用可能な消毒剤「過酢酸製剤」だった。エンビロテックジャパン株式会社(東京都)が製造・販売を行う「ビネパワー」という製品で、海外では米国を中心に、親会社のエンビロテック社(米国)の同製品が約30年間にわたって食品や食品工場で除菌剤として広く使用されてきた。米国疾病管理予防センターの分類によると、過酢酸製剤はアルコール系や塩素系の消毒よりも消毒や除菌の効果が高い。新型コロナウイルスにも有効で、何よりも人の体内に入っても安全性が確保されているという。

 金城氏はその経済的な効果についても触れ「アメリカンチェリーなどの海外から輸入している果物は、かつて値段が高かったんですが、今はそんなに高くはないじゃないですか。かつては輸送途中でカビが生えるなどで全体の半分以下しか日本に届かなかった中、過酢酸製剤を消毒に使うとほぼ100%の果実が日本に届くようになったためです」と話す。

 全国農業協同組合連合会(全農)が積極的に普及を目指しているといい、沖縄県内での製品代理店を共同事業体「津梁クリーンパートナーズ」が担うこととなった。「沖縄の物流や観光に対して活用していきたいと思っています」と意気込む。

実際の消毒作業の様子=那覇市内(津梁クリーンパートナーズ提供)

防疫で沖縄が世界一のイニシアチブ獲得へ

 金城氏はニュージーランドの消毒基準を例に挙げ、沖縄が持続的な「貿易先進地」になりえるという展望を描く。世界を舞台に貿易業を展開している張本人ならではのアイデアが詰まる。

 「例えば、ニュージーランドでは国外から中古車を入れる場合、厳格な防疫検査があります。アフターコロナの世界に向けて、このような消毒や防疫の基準やノウハウのモデルを沖縄で作って、世界中に輸出していけるはずです」

 金城氏のこの構想は、大きく3段階に分かれる。第一段階はa)沖縄で輸出入をする物品を徹底して消毒するという現状を整えて国際社会に問題提起し、b)沖縄で輸出入をしていきたいという国や企業が出てくる―という段階だ。それを経て第二段階は、周辺国から日本全体としての防疫や消毒の徹底を求める声が上がることを想定する。

 続く第三段階について金城氏は「日本中が輸出入物に消毒するようになった時には、すでにノウハウの蓄積は沖縄にあります。そのモデルをパッケージ化して世界に売っていくことが可能です」と力を込める。“世界の消毒イニシアチブ”を沖縄が取る未来だ。

 「食肉など一部の商品だけでもそういった仕組みづくりができたらありがたいです。沖縄は(コロナ禍という)マイナスの状況を、逆転の発想でプラスに換えないといけないと思います。観光業の観点からも、例えばホテル代や飛行機代に、100円でも「消毒代」として上乗せしても良いかと思います」と提言を続ける。

「こういった事は、沖縄県にとって世界に打って出る際の大きな武器になると思います。これらの決定が県庁なのか県議会なのか県知事なのかは分かりませんが、気合を入れたらできることだと思います」と言い切る金城氏。「僕のこの拙いアイデアが正しいのか間違っているのかはまだ分かりませんが」と前置きした上で「この考えを踏み台として『新しい沖縄の未来創出』が生まれる事を願っています」と前を向いた。

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