金鍾成監督が語った「全部壊す」の“真意”とは FC琉球、J3回帰のシーズンを17位で終了

 

来シーズンの大きなテーマは「強度」の向上

ピッチを見詰める金鍾成監督

 今シーズンは倉貫一毅元監督の下で開幕2連勝と好スタートを切ったが、その後に3連敗を2度するなどして急降下し、10試合を終えた5月中旬に倉貫氏を解任。2022年シーズン途中で解任された喜名哲裕氏が監督に再就任したが、状況は好転せず、喜名氏も26試合を消化した9月中旬に辞任した。

 その後、2018年に琉球が初のJ3優勝、J2昇格を果たした際の立役者である金監督が再就任。最後の11試合で指揮を執り、全体として前に向かう意識やプレーの強度は少しずつ改善されていったが、この間の成績も4勝4敗3分で勝ち越すことはできなかった。

 今シーズン全体について、金監督はこう総括する。

 「個々の巧さを表現させ切れなかったという感じがあります。サッカーは巧いから勝てるものではない。その辺を表現するためには、走るとか、厳しいところで戦うとか、そういうベースの中で自分のテクニックを表現していくものです。そのあたりを最後まで明確にさせきれなかったので、来年やっていければと思っています」

 一方、冒頭で触れた「全部壊す」というコメントは、来シーズンについて語った時に出た言葉である。以下のような文脈で語られた。

 「今日内容が良かったから、それをそのまま続けていくというよりは、もう全部壊して、またゼロから作り直さなければいけない。今までのトレーニングの2倍、3倍ぐらいをしないと、チームは上がっていくことはない。そういう気持ちで今シーズンを終え、来季に向かいたいと思います」

 具体的に、何を壊すのか。「相手より1点多く上回ればいい」という自らの攻撃的なサッカーの軸を崩すわけではない。真意はこうだ。

 「チームの方向性もしっかり意識しなければいけないんですけど、ある意味、自分たちのやりたいことだけをやってしまった。要は、そこに慣れてしまった。それをぶち壊さなければいけない。やっぱりサッカーはもっと厳しいものであって、トレーニング量から含めて足りない。意識をまたゼロに戻して、チームを作り直さないといけない」

 「2倍、3倍」としたトレーニングについても、どんな要素を重視したいか聞くと、「強度です」と即答。その上で「走る量だとか、間の休みの時間の短さとか、厳しい時間帯をトレーニングでより長く作らなければいけない。若い選手たちなので、求めるとどんどん変わっていく可能性がある。今シーズンそんなにできなかった部分を『本来はもっとやるべきなんだ』というところからスタートしたいと思ってます」と展望した。

 戦術や個々のスキルももちろん重要ではあるが、それ以前に戦うためのベースとなるプレーの“強度”の向上を求める金監督。オフシーズンでどれだけ上積みができるか、手腕が問われる。

リブランディングの行方も… 24年はクラブ動向も注目

リブランディングについて説明するサポーターミーティングの様子

 2024年シーズンは、大きな論争を呼んだリブランディングの行方も注目される。

 チーム創設から20周年を迎えたことを受け、今年10月にリブランディングでエンブレムの変更などを発表すると、サポーターらから多くの批判の声が挙がった。そのためエンブレムについては、2024年は現行のものを継続使用することを決定。一方、リブランディングの検討期間は最大1年間延長しており、今後の議論をどう進めていくのかはサポーターらにとって大きな関心事項だろう。

 創設21年目の年へ向かっていくFC琉球。サポーターや地域との一体感を強め、経営理念に掲げる「沖縄とともに、強くなる。」を体現したい。

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長嶺 真輝

投稿者記事一覧

ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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