“夢”へこぎ続けられる環境を 自転車選手育てる「琉球スターゲイザー」が発足したワケ

 

沖縄の選手に感じる「ポテンシャル」

練習前、選手たちに助言を送る渋谷さん(右から2人目)

 日本人で初めてツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャの世界三大グランツール(ロードレース)を完走した新城幸也、北中城高校時代に県勢初の全国総体ロード優勝を成し遂げた内間康平と、2人の五輪選手を輩出している沖縄。実力に応じて厳しい格付けがある競輪でも、同じく北中城高校出身の伊藤颯馬が上から2番目のランクに当たる「S級1班」に所属するなど、県出身選手が活躍している。

 渋谷さんがプロジェクトを発足させた背景には、沖縄の選手に感じるポテンシャルの高さもあるという。

 「県外では公園でサッカーや野球が禁止されたりする場所が増えてるけど、沖縄は各地に体を動かせる場所が多くて、普通に公園にバスケットゴールがあったりする。スポーツに触れられる環境が多いからなのか、基礎的な身体レベルが高い子が多いように感じます。自転車は他の競技から転向してくる選手が多いですが、競技を切り替えてもすぐに馴染む子が多いですね」

自身の自転車をメンテナンスする選手

 1989年にロードレース「ツール・ド・おきなわ」が始まったことで愛好者が増え、街中にスポーツ用の自転車を扱うショップも点在しており、親が自転車に乗っている影響で競技を始める子もいる。強豪県として発展する土壌はあると感じており、「継続していい選手を輩出できる環境をつくり、沖縄で野球やバスケに続くスポーツとして認知されたいです」と展望する。

 「スポンサー獲得の他にも、謝花のような選手がプロの競輪選手になり、獲得した賞金の一部をプロジェクトに還元してもらったり、後輩を指導してもらったりして、また次の世代が育っていくという循環をつくりたいです」と意気込む渋谷さん。謝花も「自分がこれまで競技を続けてこられたのも渋谷さんらの支援があったおかげ。後輩たちがお金の問題とかで夢を諦める環境はもったいない。プロになり、少しでもプロジェクトの力になりたいです」と決意を語る。

 それぞれが描く夢に向け、スターゲイザーたちが力強くこぎ出した。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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