FC琉球、攻守に精彩欠き3連敗 指揮官が求める“原点”とは

 
試合後、暗い雰囲気でサポーターの元へ挨拶に向かうFC琉球のメンバー=4日8日、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアム

 サッカーJ3のFC琉球は8日、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアムで13位の奈良クラブと今季第6戦を行い、0ー2で敗れた。これで3連敗となり、通算成績は2勝3敗1分で勝ち点7。順位は12位から暫定13位(8日時点)に落とした。長いシーズンはまだ序盤戦とはいえ、攻守に課題が多く、目標としている「1年でのJ2復帰」に向けて早くも正念場を迎えている。

不用意なパスから開始4分に失点

 集まった2千人近いサポーターから、開始早々にため息が漏れた。

 キックオフから4分。相手陣営の右サイドで強いプレッシャーをかけられたDF荒木遼太が自陣に大きくバックパスを送ると、飛び出した奈良のFW酒井達磨にカットされる。1対1となったDF鍵山慶司も体を寄せ切れず、ペナルティエリア外中央からゴール左隅にグラウンダーで流し込まれた。

ゴール前で競り合う金崎夢生(左)

 その後、今シーズン初のスタメンとなったFW阿部拓馬、FW金崎夢生にボールを集めて攻勢に転じる。阿部がペナルティエリア内で払ったシュートがゴール左を惜しくもかすめたり、金崎がクロスに飛び込んだりするなどチャンスをつくった。しかしゴールを割ることはできず、徐々に勢いが衰退していく。

 すると前半37分、鍵山がフィールド中央でボールを失い、すぐに縦パス一本でディフェンスラインの裏に通される。それを奈良のFW浅川隼人がダイレクトでゴールネットを揺らし、追加点を許した。

 後半は前への意識を高めて臨んだが、攻め急ぐ場面も見られ、ほとんど相手守備網を崩せず。ポゼッションを高め、攻撃的で魅力的なサッカーを掲げる中、シュート数は試合を通して5本、そのうち枠内へのシュートはわずか2本にとどまった。全体的に球際の圧力も相手より劣り、今シーズンJFLからJ3に昇格したばかりの奈良に完敗した。

攻め急ぎとコミュニケーション不足

ディフェンスラインでボールをコントロールするDF鍵山慶司ら

 開幕2連勝と幸先の良いスタートを切った今シーズンだが、3連敗でついに黒星先行となった。5試合連続で先制点も許しており、厳しい戦いが続く。試合の総括を求められた倉貫一毅監督は、こう振り返った。

 「前半の戦い方が重要という認識の中で、開始早々にミスから1失点。それで相手は落ち着く、こっちは慌てるという状況になってしまいました。そこから前に向けてプレーしましょうという形を目指しましたが、逆に攻め急ぎ、崩し切れなかった印象です」

 攻撃では「サイドを起点にして相手ディフェンスを吊り出し、その背後を使いたい」という狙いだったというが、その場面はほとんど見られなかった。開幕から柱となってきたDF牟田雄祐とDF森侑里がコンディション不良などで不在の中、ディフェンダー陣は急造感が否めず、マークマンの受け渡しなどでコミュニケーション不足を露呈した。

 2失点ともに絡んだ鍵山は「早い段階で失点するとやっぱり苦しくなる」とした上で、守備陣の連係についても言及した。「2点目の失点シーンもそうですが、センターバックのどちらかが出た時にスペースが空いてしまうという反省点があります。そういう細かいところも試合中にコミュニケーションを取って改善していきたいです」と語った。

強く求められる「戦う姿勢」

試合後の会見に臨む倉貫一毅監督

 一方で、指揮官は攻守の連係や戦術以前の問題として「もう一回原点に立ち返られないといけない」との認識を示す。“原点”とは何か。

 「やはり戦うということです。勝っていない状況で自信を失い、ミスが怖くなり、後ろ向きなプレーでボールを失って失点という形を考えたら、本当にこのゲームに勝ちたいのか、ということになる。相手より走る、相手と戦う、球際に打ち勝つということを厳しく要求していく」

 昨シーズン所属した古巣との対戦で「ものすごく気合が入っていた」と、中盤で度々ボールを奪って躍動したMF森田凜も「僕自身を含め、1人1人がもっと主体性を持ってやっていくしかない。チームのためになることを考え、発言して、行動していかないといけないと思います」と個々の意識向上の必要性を訴える。

 チームはキャプテンのFW野田隆之介をはじめ、阿部や金崎、MF清武功暉など実績のあるベテランと若手が多い一方、年齢的に中間層が少ない。21歳の森田は「本当に(先輩に)引っ張ってもらっているという印象です。自分たちがどんどん押し上げていかないとうまくいかないと思っています」とも語り、若手が存在感を発揮することがチーム力の底上げに繋がると見る。

 奈良戦後、琉球側のスタンドからは「これで3連敗だよ、3連敗」「ホームで負けてどうすんの」などと悲鳴のような叫び声が漏れた。次戦もホームでギラヴァンツ北九州と対戦する。J3ではタレントが豊富な琉球だが、当然それだけで勝てるほど甘いリーグではない。まずは激しく、泥臭く、勝ちに対する執念を剥き出しにした「戦う姿勢」を見せないと、勝利もファンも付いて来ないだろう。


長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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