“ゼロ”からの大きな一歩 那覇高18歳の須藤春輝がキングスデビュー!

 
ドリブルで速攻を仕掛け、ゴールへ向かう琉球ゴールデンキングスのユース育成特別枠選手、須藤春輝(左)=4月9日、沖縄市の沖縄アリーナ©Basketball News 2for1

 若干18歳の「背番号0」が、バスケ人生における大きな一歩を踏み出した。

 4月9日夜、沖縄市の沖縄アリーナ。プロバスケットボールBリーグ1部の琉球ゴールデンキングスのホーム戦で、キングスU18に所属するユース育成特別枠の須藤春輝(18)=那覇市出身、松島中学ー那覇高校3年=がデビューを果たした。勝利が決定的となった試合終了間際にコートに立ち、速攻から1アシストを記録。Bリーグに確かな足跡を残した。

 「ユース育成特別枠」はBリーグが今シーズンから導入した制度。各球団が保有するユースチームの選手をトップチームのメンバーに登録することができる。若手に経験を積ませることや、Bリーグユースの魅力強化などが狙いだ。身長170cmのポイントガードである須藤は今年1月から、自身が主将を務めるU18チームの活動と並行して、トップチームの練習や試合にも帯同していた。

「23.7秒」に凝縮された魅力 1アシストを記録

残り23.7秒で初めてBリーグのコートに立ち、チームメートとマークの確認をする須藤©Basketball News 2for1

 その瞬間は、キングスが91ー80でリードしていた最終第4クオーター残り23.7秒で訪れた。タイムアウト明け、ゴールドのユニホーム姿でベンチを立った須藤。U18チームの試合の時と同様に、コートに向かって一礼してから、憧れの舞台に足を踏み入れた。

 相手ボールで再開。シュートが外れ、リバウンドを掴んだカール・タマヨからボールをもらうと、すぐに前を向いてドリブルを突いた。

 大歓声に背中を押されるように、武器である安定したハンドリングとスピードを生かして一目散に相手陣営へ。ゴール手前で大きく左にステップを踏み、ジャンプしてディフェンダーを2人引き付け、シュートすると見せかけて同じく速攻に走っていた渡邉飛勇にパス。渡邉が冷静にゴール下シュートを決め、須藤に「1アシスト」が灯った。

 トップ選手たちの中に入ると体の線はまだ細いが、自身の持ち味を「スピードや切れのあるドライブ」と自負する。その意味では、須藤の選手としての魅力が凝縮した「23.7秒」だった。

「お父さん、お母さんに感謝」

試合終了後、マイクで挨拶を述べた須藤にアリーナから盛大な拍手が贈られた©Basketball News 2for1

 この日がユース育成特別枠としてチームに帯同する最後の日となった須藤。有終の美を飾り、6千人超の観衆の前で行った試合後のマイクパフォーマンスに万感の思いを込めた。声は緊張で少し震えていた。

 「受け入れてくださった桶さん(桶谷大ヘッドコーチ)、球団の皆様、背中を押してくれた那覇高校の先生方、ユースのチームメート、そして、日頃から仕事の時間を割いて練習の送り迎えをしてくれるお父さん、お母さん、本当に感謝しています。自分はまだ18歳で、これからもキャリアは長く続いていくと思うので、またこの舞台に戻ってこれるように頑張ります。応援よろしくお願いします」

 コート中央のスポットライトの下で頭を下げた須藤に、すり鉢状のアリーナから盛大な拍手が降り注いだ。

 コートサイドで出場する準備をしていた時は「ブースターさんの歓声を聞いてめちゃくちゃ緊張していた」という。それでもタイムアウト中に心を落ち着け、大一番に臨んだ。「試合に出たら絶対にボールプッシュをすると決めていたので、それを体現できたことは収穫になったと思います」と笑顔で振り返った。

 挨拶の内容に滲み出ているように、まだ高校3年生ながら、人間的な成熟度が極めて高い。トップチームの田代直希主将も「彼は大人です。フォーメーションやパスひとつとっても、『こういう時は何を狙えばいいんですか?』とか聞いてきて、質問やコミュニケーションのレベルが高い。U18の世代の中では、バスケをする上での頭脳はおそらく頭一つ抜けてるプレーヤーだと思います」と高く評価する。

 桶谷HCも「彼は将来どんな選手にでもなれる。正しい努力をして、プロ選手になってほしいと思います」とエールを送った。

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