熱き指揮官、東江監督が涙したワケ コラソン、トヨタ東日本に31-33で惜敗

 
試合後の挨拶で声を詰まらせる琉球コラソンの東江正作監督=2月23日、那覇市の沖縄県立武道館(長嶺真輝撮影)

 試合終了後、マイクの前に立った琉球コラソンの東江正作監督が目頭を押さえ、声を詰まらせた。「まだ2試合残っています。下を向かず、前を向いて、上を向いて、選手たちと一つでも多く白星を重ねられるように精進していきます」。10秒ほどの沈黙の後、胸の底から湧き上がる悔しさを押し殺しながら、自らを鼓舞するような言葉を絞り出した。

 日本ハンドボールリーグ(JHL)7位のコラソンは23日、那覇市の沖縄県立武道館で9位のトヨタ自動車東日本と今季第20戦を行い、31ー33で惜敗。運動量豊富な守備から速攻につなげたり、キーパーが好セーブを披露したりして接戦に持ち込んだが、勝ちきれなかった。通算成績は7勝12敗1分となり、7位のまま。

4度追い付くも届かず 「3ー3ディフェンス」効果発揮

チーム最多の8得点を挙げた東江太輝主将

 試合は序盤から体格で勝る相手に押し込まれる。ほぼ横一線に並ぶ「0ー6ディフェンス」で間を割られたり、打点の高いロングシュートを高確率で決められたりして先行を許した。

 開始10分弱で一時5点差まで広げられたが、前半中盤から3人が高いポジションを取る「3ー3ディフェンス」を織り混ぜ、足を使って1対1でのプレッシャーを高めると流れが変わる。相手が好シチュエーションでシュートを打ちきれない場面が増え、度々持ち味である速攻を出して差を詰めた。

守備で体を張るコラソンの選手たち

 3点ビハインドで迎えた後半は大接戦となる。引き離しにかかるトヨタ自動車東日本に対し、コラソンはチーム最多の8得点を挙げた東江太輝のシュートや守護神・衣笠友貴の好セーブなどで食らい付く。何度もスコアで並び、相手を追い詰めた。しかし、残り3分でこの試合4度目の同点となる30ー30に追い付いたものの、勝負所でのパスミスもあってまたも勝ち越され、結局最後まで一度もリードを奪えることなく接戦を落とした。

 指揮官が「今季で一番激しい試合。終わった後の選手の消耗も非常に激しかったです」と振り返った通り”死闘”となったこの試合。負けはしたが、会場に詰め掛けた1,082人の観客を大いに沸かせた。

「ターニングポイントになるゲームだった」

東江太輝主将(左手前)の得点に湧くベンチ

 近年は1勝止まりのシーズンもあり低迷が続いていたが、東江監督が就任した今季は既に7勝と躍進を見せているコラソン。依田純真や髙橋翼ら若手が台頭し、小柄ながら沖縄のチームらしい運動量豊富でスピード感のあるチームに仕上がっている。

 シーズンごとで試合数が異なるため、単純比較はできないが、2012-13、13-14シーズンに記録した過去最多の8勝まであと一つに迫る。試合前の時点で3試合を残していたため、この試合に勝てば今シーズン終了時点で過去最多勝利数を更新する可能性もより高くなっていたため、チームにとっても、ファンにとっても悔しい黒星だった。

試合中に指示を出す東江監督

 悔し涙を流した東江監督は、この一戦に懸ける思いをこう振り返った。「今季ここまで7つ白星を重ねてきて、この試合に勝つと選手たちが自信を付けるだろうと感じていました。一つのターニングポイントになるゲームだっただけに、勝ち切るんだという強い気持ちで臨みましたが、あと1点が届かない試合でした」。若い選手が多いコラソンにとって、大事な一戦での勝利は個々に自信を植え付け、チーム力を底上げする。これまで中学年代や世代別日本代表で多くの好選手を育ててきた名将ならではの言葉だった。

 今季も残すところあと2試合。今月25日に2位のジークスター東京とアウェーで対戦し、最終戦は最下位12位のゴールデンウルブス福岡と名護市の21世紀の森体育館で戦う。東江監督は「もっともっと強くならないといけない」という決意を語り、会見を締めくくった。シーズン中の一敗で涙を見せる程の熱量を持った指揮官に引っ張られたチームは、最後までファンを沸かせてくれるはずだ。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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