「中間報告書」が指摘した首里城警備体制の杜撰

 

消防隊到着から放水開始までに7分

火災前の首里城正殿

 私が着目したのは報告書の「第2−3(3)夜間の警備体制」と「第2−5火災の初期段階の対応等」である。その前に、「第2−5(1)火災の覚知から消防の活動開始まで」に記された内容を時系列でかいつまんで示すとこうなる。

〈31日午前2時34分、人感センサーが発報。同2時40分、火災警報装置が発報。同2時41分、遠隔警備会社は消防に通報したものの、火災の具体的な内容や消防が正殿に入るまでの門扉の施錠状況についての情報不足で、消防が状況把握するのに時間を要した。同2時48分、消防隊が首里城公園内に到着。同3時5分放水開始〉

 時系列から分かるのは、当直の警備員による初期消火活動の痕跡が見えないことだ。発生直後は「火の手の勢いが強すぎて警備員が近づけなかった」と報道された。さらには、消防隊到着から放水開始までに7分を要していることだ。

 その理由はいずれも「第2−5(2)初期段階の対応における問題点」と「第2−6消防活動上の問題点等」で指摘されている。

 私が想定した通りの内容だった。なぜ私が「第2-3(3)夜間の警備体制」に着目したのか。私は火災直後、管理者の「沖縄美ら島財団」管轄の「首里城管理事務所」に「警備員の所属会社と勤務形態(正社員か非正規か)」を問い合わせた。財団は「捜査中に付き答えられない」という回答だった。

 そこで「首里城 警備員 募集」と検索したところ、那覇市内にあるビル管理や警備を行う会社にヒットした。しかしその待遇は、世界遺産(琉球王国のグスク及び関連遺産群)を警備するに値するものとは思えなかった。経験も年齢も問わず、未経験でも歓迎な上、時給制のアルバイトである(現在は募集を終了)。

 11月定例県議会の一般質問で、赤嶺昇議員(現・議長、会派おきなわ)は質問に立ち、警備会社名を質問すると、県当局は当初「都合上、公開していません」と逃げていたものの、赤嶺氏が「ネットに出てます」と切り返し、「勤務体系、待遇、警備体制」などを追及すると、逃げ切れないとみて時給などを回答した。

 この場で明らかにされなかったのが「巡回パトロール」の有無だ。通常、警備会社は担当する現場を専用車で巡回するが、当局の回答は「その日はしませんでした」。赤嶺氏の質問は首里城関連だけではなかったので致し方ないが、赤嶺氏には「それなら他の日はしてるんですか。あるいは、どのくらいのサイクルで実施しているんですか」と畳みかけてほしかった。

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