攻撃力の向上実感、女子ハンドのザ・テラスホテルズ 新リーグ申請見送りの受け止めは…

 

新リーグ参入諦めず「ハンドは沖縄の文化であるべき」

試合後、観客に向けてメッセージを送る東長濱秀作監督

 試合終了後の取材では、2024年開幕予定の新リーグについても選手や監督に所感を聞いてみた。

 新リーグは入会金が1,500万円、年会費が3,000万円とこれまでに比べてそれぞれ数倍に上がるほか、リーグが全チームの事業運営を一括して行う「シングルエンティティ」の手法を採用する。現状で男女それぞれ9チームずつが参入審査を申請。男子の有力チームであるジークスター東京や伝統のある大崎電気、湧永製薬などがリーグの運営手法に同調せず、申請を見送ったことで注目を集めている。現行リーグは2024年以降も継続する予定で、このままいくと分裂する危機状態となっている。

 テラスホテルズについては、コロナ禍で運営母体のホテル業が大きなダメージを受け、財務的に厳しいことなどから申請を見送った。ただ、東長濱監督は「本当に参入ができないかどうかはまだ決まっていません。最高峰のリーグでプレーしたいという選手が集まってるので、どうにかできないかと思っています」と語る。その上でチームの存在意義を高めるため、熱を込めてこう続けた。

 「自分たちができる一番の活動は、試合で結果を残すことです。今日はお客さんが250人ほどでしたが、過去に琉球コラソンがプレーオフに進んだ時はホームで3千人以上を集め、来場者が会場に入りきれなかったこともあります。Bリーグの琉球ゴールデンキングスが多くの観客を集め、バスケが沖縄の文化になっているように、ハンドボールも沖縄の文化であるべきだと思います。皆さんに良い報告ができるように結果を残し、チームの認知度を上げていきたいです」

地元出身の上地「沖縄でハンドをやりたい」

攻撃の司令塔を務める上地涼奈

 「正直に言ったら、このチームがなくなってしまうんじゃないかっていう不安があります」

 率直に胸中を語ったのは沖縄出身の上地だ。「私は地元出身選手ということもありますし、このチームに集まった選手、スタッフと高いレベルのリーグで、沖縄でハンドを続けたい。結果を出すことで、状況を変えられたらいいなと思っています」と真っ直ぐな目で話し、自らのモチベーション向上につなげているようだ。

 まだチームは創設2年目だが、少しずつ地域に根付いていっている感触もあるという。県内では多くの日本代表選手を輩出し、「ハンドボール王国都市宣言」をしている浦添市がメッカだが、テラスホテルズが本拠地を置く名護市についても「私が小学生の頃は名護に行って試合することとかもなかった。名護でも少しずつハンドが盛んになっているのも見えるので、それをなくすのはもったいない」と話す。

 その上で、こう続けた。「沖縄はハンドボールが盛んと言われても、小中高まで。女子はその次の受け皿がなかった。後輩たちのためにもなんとかチームを存続させたい。沖縄でやりたいという自分のワガママもありますけど、なんとかチームが高いレベルで戦える環境を残したいです」

 ついに構想が本格化した新リーグ。新しい運営形態などについて、選手からは「選手にとってのメリットが分かりづらい」など戸惑いの声も聞かれる。個々のキャリアやチームの先行きに不安を抱えながらも、「やるべきことをやる」と目の前の試合に全力で臨む選手たち。多くの人が会場に足を運び、応援で背中を押すことが彼女たちにとって一番の力になるはずだ。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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