「今季の道筋ができた」開幕2連敗も、新生コラソンを象徴した”2つの場面”

 
試合終了間際、強烈なディスタンスシュートでゴールを決めるパン・エンジャー=15日、那覇市の沖縄県立武道館

 日本ハンドボールリーグ(JHL)の琉球コラソンは15日、那覇市の沖縄県立武道館アリーナで大同特殊鋼フェニックスと今季第2戦を行い、29ー39で敗れた。ホーム開幕戦を白星で飾れず、2連敗。前半約20分で10-10の同点に追い付いたが、その後に7連続失点で突き放され、最後まで一度もリードを奪えなかった。

 2試合連続となる二桁点差での敗北だが、この試合は今季新たに加入した台湾出身で身長192cmのパン・エンジャー、182cmのウー・ユクシーが初出場。まだ連係不足感は否めなかったが、試合後に東江正作監督が「今季の道筋ができた」と語った通り、高さを生かした新たな攻撃オプションが垣間見える場面もあった。新生コラソンを象徴する2つの得点シーンに触れたい。

192cmのエンジャー 長距離シュートとパスで個性発揮

シュートを決めたエンジャー(18番)にガッツポーズで応えるコラソンベンチ

 まずは3点を追っていた前半約10分の場面。左利きのエンジャーが右45度の高い位置でボールを持ち、縦に突進して相手ディフェンスラインの間を割る。ジャンプしてシュートすると見せ掛け、3人を引き付けてポストの髙橋翼にパス。フリーの状況をつくり、得点につなげた。

 もう一つは、8点差を付けられて既に勝敗が決していた試合時間残り約30秒の場面である。前のめりにならざるを得ない時間帯ではあったが、エンジャーが右45度から中央に切り込み、そのまま相手ディフェンス頭上の高い打点から長距離のディスタンスシュートをゴール左に突き刺した。威力も十分で、これまで小柄な選手で戦ってきたコラソンにとって新たな武器になることを印象付けた。

 東江監督も最後のエンジャーの得点シーンに触れた上で「負けはしましたが、あれがプラスアルファになれば、チームにとって今後の道筋を示す形になると感じました。彼の高さやパワーはこれまでウチになかった要素なので、彼がもっと積極的にシュートを打てば、他の日本人選手も生きてきて相乗効果が生まれると思います」と前向きに語った。

 エンジャー自身はまだコンディション調整が不足していると自認しているようで、今後に向けて「もう少しチームメートとのコミュニケーションが必要。自分も高さを生かし、足も使えるようにして、もっとチームメートにパスが出せるようにしたいです」と展望した。

体を張ったディフェンスを見せるイェスペル・ブルーノ・ブラマニス(左)と東江太輝

 この試合ではその他、右ウイングのユクシーも高いジャンプ力を生かして2得点を挙げ、十分に戦力として計算できる力があることを証明。もう一人の外国籍選手であるエストニア出身で192cmのイェスペル・ブルーノ・ブラマニスは、主にポストのディフェンスで体を張った。

東江主将「当たり前に30点以上取れるチームに」

 一方、エンジャーがコミュニケーションの必要性に言及したように、それが浮上の鍵を握ることは間違いない。まだ外国籍選手3人がコラソンの「人もボールも動く」戦術に馴染めていないため、この試合でも度々連係した動きが停滞し、オフェンスの終わり方が悪かったために何度も速攻からの得点を許した。

中央へ切れ込んでシュートを放つウー・ユクシー

 東江太輝主将もそれは強く認識しており、「まだ(外国籍選手が)動きのフォーメーションを理解できていなくて、試合中に伝達ミスも起きています。コート上ですり合わせができればいいですが、まだ一回一回ベンチに戻って説明して、やっと理解が進むというレベルです。もっと話をしていかないといけません」と危機感を語る。

 ただ、台湾人選手2人の能力は高く評価しており、「高さが出る分、サイドシュートも増えると思います。(ウイングの)仲程やユクシーが2人で10点以上取れるようになれば、当たり前に30点以上は取れるチームになる」と期待感を示す。「まだ合流して日が浅いので遠慮してるのかもしれませんが、(エンジャーとユクシーの)2人にはもっと自信を持ってガツガツやってほしいです」とシュートへの積極性を求めた。

オフェンスの司令塔を担う東江太輝主将

 17日には再び沖縄県立武道館で試合があり、午後1時から大崎電気オーソルと今季第3戦を行う。中1日でチーム内の連係を劇的に改善させることは難しいが、新戦力の長所を生かす場面を少しでも増やしたいところだ。


長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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