「自信を付けてほしい」元プロキックボクサー王者の想い 大会MVPに遠征支援

 

交通費補助 高レベルの大会出場を後押し

右フックで相手の顔面にヒットさせる選手

 副賞で交通費を補助する背景には、自らの苦い経験がある。

 16歳でプロデビューし、2019年に県勢で初めてWBCムエタイ日本統一フライ級王座を獲得するなど国内2冠を獲得した仲山さん。世界を目指せる逸材としても期待されたが、怪我を理由に引退せざるを得ず、21歳の若さで一線を退いた。

 全国のトップレベルで活躍したが、下積み時代はファイトマネーも安く、遠征費で赤字が出ることも多かった。しかし県外の主要大会に出てハイレベルな選手たちに揉まれて対戦経験を積まないと、実力を付けて名前を売っていくことは難しい。キックボクシングは格闘技の中でもボクシングなどに比べてメジャーな競技とは言えず、業界全体として資金が限られているのも事実だ。

 仲山さんは「県外大会の大会で沖縄の選手を参加させるためには交通費がより多くかかってしまうで、よっぽど強くない限り大会側も沖縄の選手は呼ばないんです」と説明する。引退後は自身が所属したRIOT GYMでコーチを務め、既にアマチュアの全日本王者も育てているが、「離島県という環境もあり、沖縄でいい選手を育てることは特に難しいと感じています」と語る。そこで取り組み始めたのが、選手たちが実戦経験を積むための大会の主催と、少しでも県外大会出場へのハードルを下げるための遠征費の補助だった。

 現役時代から「日本一強いジムを沖縄につくる」と夢を語っていた仲山さん。キックボクシングの魅力を「足技がある分華やかさがあり、実践的な分、生物的に強いということも証明できる。良いとこ取りの競技だと思っています」と競技愛は衰えず、近く自らがオーナーを務めるジムを構える予定という。

 10月23日には与那原町観光交流施設で初めてプロ大会の指揮も取る。自身の教え子で、メインイベントを張る下地奏人(RIOT GYM)など多くの沖縄出身選手が出場することから、「県外でも通用する沖縄のキックボクサーたちの実力を是非見てほしい」と来場を呼びかけた。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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