総支配人も現場に… 沖縄ホテルで人手不足が深刻化 需要回復続くも

 

8割以上の留保金が蒸発

経営の現状について説明するかりゆしの平良朝敬会長=那覇市内

 一方で、秋の修学旅行需要などの団体客は感染リスクなどの観点からまだ不透明な部分が強いが、沖縄観光の需要は今後も回復基調が続くとの見方が大勢だ。政府も「Go To トラベル」に代わる全国旅行支援を近く開始する方向で調整しており、旅行を考えている人たちが「様子見している」との声も聞かれる。

 かりゆしの平良朝敬会長も、2019年に沖縄の入域観光客数が初めて年間1千万人を超えたことを念頭に「そもそも沖縄は観光地として魅力的な存在なので、感染が収束すればまた行きたい場所、選ばれる場所になる。需要は出てくると思います」と見通す。

 家族連れが多い夏場の稼働率が回復傾向だったことについては「外出規制がかかって、子どもを2年、3年と海に連れて行けていないという親御さんには『海に入れてあげたい』『見せてあげたい』という思いも強い。コロナ禍での体調管理にも慣れ、ホテルも感染対策をしっかり取っているので、第7波があってもそこまでキャンセルに繋がらなかったのだと思います」と分析する。

恩納村の海岸

 ただ、先行きを楽観視している訳ではない。かりゆしは今年で創業60年の節目を迎えるが、この60年間で蓄積した内部留保の8割以上がコロナ禍で蒸発し、「この状態があと1年も続けば債務超過に陥る。そうしたらもう死に体ですよ」と危機感は極めて強い。

 目下最大の課題である人手不足に対応するため、日本での技能資格を持ちながらもコロナ禍で母国に戻らざるを得なかった外国人労働者に対し、日本で通っていた学校を通してアプローチするなど対応を急いでいる。

行政も積極支援を

 コロナ禍で人流がストップし、大きなダメージを受けた観光業。沖縄の基幹産業として位置付けられるが、待遇面や経営の脆弱性などから県民の就業先としての人気が高い訳ではないことも県の調査で明らかになっている。ただ、沖縄の観光需要がコロナ禍に入る前に戻った時に現状のマンパワーで受け入れることが難しいのも事実だ。

 コロナ禍においては、飲食業は行政から時短協力金が支給されたのに対し、観光業には経営支援策がなかったことから、業界からは「助成金があれば、人材離れも少しは防げたのではないか」などの声も漏れる。行政も積極的に支援し、人材確保に向けた道筋を描いていくことが必要だ。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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