【ぎぼっくすコラム】運転手が最も怖いのは心霊現象よりも… ~タクシードライバーぎぼっくすの1メータートーク~

 

亡くなった祖父の下へ

 皆さんがよく聞いてくる心霊現象の怖い話ではないが、心霊現象に似たような経験は一度だけある。残念ながら怖い話ではないが聞いてほしい。

 僕は去年祖父を亡くしたのだが、その祖父の初七日の日の法要を執り行う日、僕はタクシー勤務をしていて、お坊さんが来る時間帯に合わせて休憩を取り、タクシーで仏壇のある那覇市首里当蔵町の祖父の家に向かった。

 初七日の法要が終わり、タクシー業務に戻るとすぐに会社の無線が鳴った。呼ばれた住所へ行くと、高齢の女性と息子と思われる中年男性の親子が乗った。目的地を訪ねると「とりあえず真っすぐ行ってください。案内しますから」と言われて目的地を聞けないまま、お客様の言う通りに進むと、徐々に舗装されていない砂利道へと進み、さらに建物の無い草むらへと進んだ。

 そして「ここで降ります」と言われて停まった場所は、お墓が並ぶ霊園のど真ん中。タクシーを止めたその場所は紛れもなく祖父が眠るお墓の目の前だったのだ。お墓が何百も建ち並ぶ中で数センチのズレもなくピッタリ祖父のお墓の前で停まった事に驚いた僕は、つい「僕のおじいちゃんのお墓ですね。もしかしてお墓参りですか?」と聞いてしまったが、その親子は「いえ、違います」と言ってお墓がない草むらの方へ歩いて行って、見えなくなってしまった。

 その親子が建ち並ぶお墓の方ではなく何もない草むらに行ったのも今思うと不思議だったが、その時の僕は祖父が仏壇からお墓まで僕のタクシーで送ってほしかったんだなと嬉しくなっていた。祖父の姿が見えるかなと思ってお墓を数分間見つめたが、霊感のない僕にはお墓の上にとまっていたデカいカラスしか見えなかった。

「お客様の人生」乗せ、走る

 これが心霊現象といえるか定かではないが、僕が体験した霊的な話はこれだけだ。それと心霊現象ではないが、過去から現代にタイムスリップしてきたお客様を乗せた事がある。この話は長くなるのでまた次回書きたいと思う。

 他にも年配の男性を危機一髪で助けた話や、外国人男性と大相撲の話を熱く語り合ったり、戦争体験を話してくれる年配の女性、北部から那覇の専門学校へ進学した男の子を入学式会場まで送りながらかわいらしい悩み相談を受けた話、明日から県外の就職先で研修が始まる大学4年生を空港まで乗せながら、就職についての熱い考えを聞いて感動した話などたくさん書きたい事がある。

 タクシードライバーはただお客様を乗せて目的地まで走るのではなく、「お客様の人生を」乗せて走っているのだ。

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