個人で収集2万点 民俗資料博物館「物で後世に歴史を」

 

なぜ「民俗資料博物館」を?

 民俗資料博物館の眞嘉比朝政館長

 1997年のある日、眞嘉比館長の心を痛める出来事があった。古くから沖縄人々の生活を支えてきた民具が粗大ごみとして捨てられていた。
 「遠い昔から使われてきたものが、時代に波に呑まれ消えていく」との危機感に駆られた。

 「多くの人に実物を見せて伝えないと意味がない」と、博物館を開館することを決意し、2005年にオープンした。

 今の若者に「蓄音機」や「高機(手織り機)」と言っても、通じないかもしれない。
 「(実物を知らない世代に)物を語るときに、実物がないと説明すらできない。(歴史を語り継ぐために)失われていくものを集めて後世に残していかなければならない」
 そう話す眞嘉比館長は「民俗資料博物館」を通して、沖縄の歴史や風習を現代に具現化させている。

逆さ文字に込めた思い

「今の若い人は戦争を知らない。絶対に二度と戦争を起こしてはならない」

 この言葉の根底には、自らの戦争体験がある。
 看板に書かれた上下逆さの「戦争」の文字には、戦争に「反対」する強い想いが込められている。

「こっちが看板の付け方を間違えたと思って、たまに『看板さかさまなってるよ。直さないと』って言ってくるお客さんもいるわけさ。でも、勘の良い人はこれの意味にはすぐ気付くよ」

 民具だけでは戦争の悲惨な歴史を語り継げないと、2016年に別館「戦争資料館」を併設した。館内には、伝単(ビラ)、バルカン砲、台座つきの機関銃、軍用無線機、艦砲射撃弾など、沖縄戦に関わるものが所狭しと展示されている。どれも色あせ、さび付き、戦後75年の年月を物語っていた。

 戦後75年の節目の年に、当時の新聞は戦争をどう伝えたのかを伝える企画展を開催している。新型コロナウイルスの騒動がなければ、戦争の歴史を学ぼうとする団体客が多く来る予定だったという。

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