沖縄北部テーマパーク事業を支援 地元参加型ファンドで県民を当事者に、SCOM

 

「沖縄をつくっていく責任を」

豊かな自然が残る沖縄本島北部の「ヤンバル」の森

 一方で、県外や海外の事業者が沖縄で事業を行うと、地元から反発が出ることも少なくない。だからこそ、上間氏は地元参加型のファンドが必要だと説く。

 「双方に満足な情報が行き渡っていないという状態は、いろんな所で慢性的に起きています。だから『ないちゃーが沖縄を食い物にしてる』とか『儲かる場所に沖縄の人は関われない』という見方が生まれてしまう。でも、彼ら(ジャパン社)は沖縄の方々ともっと繋がりを増やしたい。繋がれるルートが少ない中で、結果的にファンドという機能を使うことになりました」

 その上で、こう願う。「沖縄を変えるような大きなプロジェクトに『自分達もリスクを取って関わったんだよ』と言えることはとても大事です。時代の流れに押されて、気が付いたら沖縄はこうなってました、ではなく、沖縄をつくっていくということに対して責任を持ってほしいと思います」。主体性、責任感を持つことが、長期的な視点でテーマパーク事業を見た時に、次世代への継承を円滑に進め、施設の価値を高めていくことに繋がると考える。

経営ノウハウを学ぶ機会に

 また、ファンドの存在は県内事業者の経営力の向上にも寄与する可能性も秘める。テーマパークが完成すれば人流が変わり、周辺にはホテルや飲食店、居住区が生まれる。そこにビジネスチャンスを見い出すためには、市場の調査やサービス内容の精査が必要になる。

イメージ写真

 上間氏は「どんな層の人がそれぞれ何人来て、滞在時間はどのくらいで、どれくらいの消費をするのか。そういった生きたデータを基にしながら進める事業を側で見られる。しかもこれだけの大きな規模感のものを。これはとても貴重な機会で、そこには多くのヒントがあると思います。自分達のビジネスと組み合わせることもできるのではないでしょうか」と語り、一流の経営ノウハウを学ぶ絶好の機会になり得ると見る。

 2019年10月に設立したSCOMは県内の中小零細企業を対象に出資のみにとどまらず、経営支援まで行う。今回のファンド組成に至るまでには、内部での話し合いの中で事業化を見送るという話が出たこともあったという。それでも「沖縄経済、中小企業を変える」というSCOMの設立目的に合致すると判断し、現在に至る。

 今後に向け、上間氏は「沖縄の経済と県外の事業者を繋ぐ役割は大事だと思っています。私たちとしてはグローバルな経済状況も含め、今起きていることをきちんと解説し、翻訳し、理解してもらって、一緒に考えていきましょう、ということを促していきたいです」と力強く語った。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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