カルチャーとしての“飲む”を追求する「LIQUID THE STORE」の5年とこれから
- 2022/7/12
- 食・観光
“ここにしか無いもの”を躊躇なく提案する
「開店して1年目は、コンセプトも含めて机上で考えたことを形にしていく時期でしたね。『良いものは良い』という気持ちで、沖縄にこだわることなく国内外の造り手から、飲むにまつわる良いものを扱っていて、その中には沖縄の敬愛する造り手の作品もありました。そして、お客様の声を聞きながら、お店の在るべき姿や沖縄での役割などにについて、ひたすら模索する日々が始まりました」
2年目からは取り扱う沖縄のものの量が徐々に増えていく。泡盛ベースのジンや県産サトウキビのラムなど、面白くて良いものとの出会いがあったからだった。「端的に知らなかったということです。特に食品やお酒は、自分の足で探さないといけないということを思い知りました」と村上さん。「日本代表」と思える沖縄の物は幾つもあった。
「ここにしか無いもの、良いものと判断したら、それは躊躇なく提案したいんです」
3年目は沖縄の作り手たちと一緒にものづくりを始めるという新しいフェーズに入った。泡盛の酒造とコラボしたジンや、季節ごとに独自ブレンドした紅茶など、沖縄だからこそ作り出せるものを企画し始めた。「前職でディレクションの仕事をしていたので、アイディアや企画は出せるんです。それを沖縄の風土が香るように形にしていくイメージですね」。
この流れは現在にも脈々と続いており、酒好きたちの心をくすぐる限定商品はLIQUIDから断続的にリリースされている。
そして3年目の途中に、コロナ禍という大きな転換期が訪れる。
コロナ禍に見出した現代版「共同売店」モデル
村上さんはコロナ禍初期のことを「これまでに想定していたこととは全く違う進化をしないとけない、と考え続けて、とにかく対応に追われていました」と思い返す。1店舗で出来ることに限界があることを感じ、後に併設することになるTESIOとタッグを組んだ。
「今思い返すと、どうしていいか分からなかったことも含めて、コロナじゃないと考えてなかっただろうな、ということは物凄くたくさんありますね。信頼できる人たちとチームを組むということもその1つだと言えます」
コロナで人流が止まったのは、県外客の来客も多かったLIQUIDには痛手ではあったが、その一方で地元客が増えた。緊急事態宣言などの制限下で、インスタライブをしたり、飲み物の新しい見せ方を提示したり、地元の人に喜んでもらうための企画をTESIOのスタッフとともに日々考えた。「1つ新しいことをすると、その都度応援してもらえることもあって、誰かが見ててくれてるということを実感しました」
そんな中で、嘉数から現在の場所(壺屋)への移転の話が出てきた。コロナ禍の真っ只中では、当然経営的にはかなりリスキーな判断になる。そこで村上さんが思いついたのは、沖縄特有の「共同売店」だったという。
「チーム作りの延長線上で、有志で集って共同出資する形で『共同売店』を現代版にアップデートをしてみようと考えました。コロナ禍のタイミングでこんな話がきたのも何かのめぐり合わせで、身を挺してリアルに体感できるいい機会だなと思って、移転を決断しました」