キムタツコラム⑪勉強がつまらないわけない理由 佐敷中での講演から

 

 2つめの理由は、誰かにやれと言われてやっている勉強が面白いはずないということです。勉強というのは常に主体的です。将来はミュージシャンになってやろうと思うから音楽の勉強に身が入ります。将来は作家になりたいと思うから言語の勉強に集中できます。自分の人生ですから自分で決めるのです。ところが勉強の理由を考えないまま、ただ機械的に学校に通い、機械的に授業を受けている生徒たちの場合、なんとなく「やらされている」という感覚を抱いても不思議ではないと思うんですね。ましてや親から「勉強しなさい」なんて言われると、ますますやる気がなくなってしまうんじゃないでしょうか。

「どんな人生がワクワクするのか」を考えよう

 その点で1つめの理由と2つめの理由ってリンクしているのですが、生徒たちだってさすがに10年以上生きているのだから自分の人生の方向性ぐらいは自分で考えなければなりません。高校生にもなって、将来をどうしたらいいのかわからないなんて頼りないことを言っているようでは困ります。自分で探すのです。他人が与えるものではありません。

 人生の方向性が見えない生徒の場合、自宅と学校(と塾)の往復しかしていないケースが多いように思います。新型コロナウィルス感染症の影響でなかなか外に出ることができなかったのはいたしかたない部分ではありますが、自宅と学校のラインから外に出てみるべきです。

 世の中にはいろんなことをして生きている大人たちがいます。それがすべて子どもたちの将来の選択肢になります。会社員が圧倒的多数ではありますが、それにしたってさまざまな職種の会社があります。テレビ局でアナウンサーをやっている会社員がいます。芸能事務所でマネージャーをやっている会社員もいます。出版社で編集者として頑張っている会社員もいます。仕事にはさまざまな種類があります。加えて、映画監督、小説家、エッセイスト、工芸作家など、ものづくりに励んでいる人たちがいます。農業や漁業にたずさわっている人たちだってたくさんいらっしゃいます。

 自分はどういう仕事に就いたらワクワクしながら人生を過ごせるのかなと考えることです。そうすれば、だいたいの方向性は見えてくるのではないでしょうか。ため息をつきながら出勤するのではなく、自分のやりたいことが何なのかを小学生や中学生ぐらいのときからしっかりと考え、できることならば職業体験もし、笑顔で生きていくために必要な勉強を続けて、誰にも負けないぐらい高い力を身につけることが大切だと考えています。

勉強は面白いのです。

 勉強は面白いのです。でも、理由もなく機械的にやる勉強ではモチベーションが続かないでしょう。それに、誰かにやれと言われてやる努力ではつまらないはずです。子どもたちにはいろんな大人の仕事ぶりを見ながら、自分の人生を深く考えてほしいなと、そして幸せに生きていってほしいなと、僕はそう思っています。

 佐敷中学校の生徒たちは僕のつまらないギャグに愛想笑いしながら、深く頷きながら、メモをとりながら、真剣な表情で聞いていました。あの子たちの中から沖縄を支える人材が育ってくれればいいなと思いながら、中学校をあとにしました。南城市教育委員会の方々と佐敷中学校の先生方には大変お世話になりました。感謝申し上げます。

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