危機管理から見た“尖閣クライシス”とは
- 2020/8/26
- 政治
世界各国がコロナ禍に対応する中で、中国海警局の船による尖閣諸島周辺への攻勢が強まっている。既に連続110日以上にわたり我が国の接続水域を航行し、領海への侵入も繰り返される。中でも5月8日から3日間連続で領海侵入し、2隻が与那国所属の漁船を2時間近く追尾……追い回す事態も起きた。
国民の生命と財産を守る立場の安倍晋三首相は、習近平国家主席を国賓として招聘しようとするなど、かの国から命も領土も守ろうという気概が見えない。
尖閣クライシスは“右派の専権事項”とみなされてきたが、ウイグル人の弾圧、香港国家安全維持法による香港の締め付け、民主活動家らの逮捕劇などを目の当たりにすると、単純にそうとばかりは言えなくなってきた。
新型コロナウイルスとの付き合い方同様、尖閣諸島周辺の緊張を「正しく恐れる」には何が必要なのか。前回に続き「Zebra安全管理研究所」を主宰する井上正利氏に話を聞いた(前回記事はこちらhttps://hubokinawa.jp/archives/1457)。
中国船の大型化と武装化
――まず“海警局”について教えてください。
「我が国の海上保安庁に相当します。中国共産党は国務院(政府)と中央軍事委員会(軍)を統括していて、以前は政府の指揮下にあったが、今は軍の人民武装警察の配下に置かれたので、そのことに留意する必要があります」
――以前と明らかに違ったことは?
「船が大型化したことです。かつては時化になると引き揚げていたのが、これによって多少の時化では退散しなくなりました。それと武装化で、大型機関砲も確認されています。
運用能力の向上も見逃せません。以前は例えば4隻で船団を組んで行動していたのが、2隻ずつ分散してしかも統率の取れた行動を取っています。軍が指揮していることを窺わせるもので、日本側の海保の監視の弱体化を誘っています」