危機管理から見た“尖閣クライシス”とは
- 2020/8/26
- 政治
――海警局=海保と捉えてはいけないと。
「あの白い船体は表向き巡視船を装っていますが、実際の運用は準軍事的な行動の可能性が高く、後方にいる中国海軍と密に連携していると思われます」
――受ける日本側は?
「鹿児島と石垣に大型巡視船を新たに2隻配備しましたが、海上保安庁が保有する大型船は中国の半分です。海保の警備体制をまずは強化すべきです。それと「外交力」「情報発信力の強化」です。南沙諸島を巡り対立している国々や台湾とも情報を共有し連携を強化するべきです。さらに、『歴史的にも国際法上も日本固有の領土であるのは明らかである』ということを国際社会に発信し続けるべきです」
――接続水域内での航行は日常的になっていますね。
「水域内を航行し10日に1回の割で領海侵入し、程なく水域外に出るのを繰り返す。野球で言えばランナーがハーフウエーにいて、隙あらば次の塁を窺っているようなものです。それが前述したように5月には大胆な行動に出て、さらに今月中旬には大挙して漁船を送り出すと報道しました。『“中国領海内”で操業する漁船を日本の拿捕から守る』とアピールしたかったのでしょう。このように既成事実をどんどん積み重ねて常態化していくのが中国のやり方です」
――懲りないですね。
「昨年6月、習近平主席が国賓として来日すると合意した後も接続水域内に入る日数は毎月20日以上で、よく例えられるように握手を交わしながら靴を踏んづけているようなものです」
軍事拠点の構築が狙い
――領海侵入を繰り返す狙いは?
「もうずばり、島を奪還し軍事拠点を構築することです。中国共産党は長期戦略として、建国100年にあたる2049年に世界覇権の掌握をもくろみ、『海洋強国』を目標に掲げています。そのためには東シナ海と南シナ海を支配する必要があります」
――それで尖閣を?
「中国が防衛ラインとみなす『第一列島線』があります。鹿児島―奄美諸島―沖縄本島の左側を通り、尖閣諸島―台湾―南沙諸島―西沙諸島を内側にぐるりと囲む線のことで、別名『龍の舌』と呼ばれています。特に尖閣諸島海域を通過すれば太平洋に至近距離で進出できるため、なんとしてもここを押さえたいのでしょう」