モズクの雌雄判別で品種改良可能に 収量増に期待 OISTら研究

 
研究チームのメンバーである、沖縄県水産海洋技術センターの與那城由尚研究員(現沖縄県海洋深層水研究所所属、左)とOISTマリンゲノミックスユニット博士の西辻光希研究員

 沖縄科学技術大学院大学(OIST、沖縄県恩納村)と沖縄県水産海洋技術センターの研究者は、オキナワモズクの雌雄を判別する遺伝子解析法を開発した。これにより世界で初めて、褐藻(モズクやワカメ、コンブなどを含む藻類)の雌雄判別が実現し、両者の掛け合わせによる品種改良が可能となった。また、同じ手法により遺伝子情報を事前に解析できることから、これまで養殖で時折発生していた「モズクの芽が出ない」という原因不明の問題を完全に解決するに至った。オキナワモズクの生産量増加は確実で、OISTマリンゲノミックスユニット博士の西辻光希研究員は7日に県庁で行った記者会見で「ワカメやコンブにも応用が利くと思います」と語り、他の藻類の養殖への活用にも期待が高まる。

※西辻研究員の正式表記は、「辻」が1点しんにょう

イメージ写真

2019年秋から4人で開始

 研究メンバーは西辻研究員の他、西辻研究員の妻である西辻淑恵技術員、OIST同ユニットの佐藤矩行教授、沖縄県水産海洋技術センターの與那城由尚研究員(現沖縄県海洋深層水研究所所属)の4氏。2019年秋から研究を開始していた。今回の研究成果は、6月9日午後2時に科学雑誌『Phycological Research』にて発表されている。

モズク養殖の課題

 沖縄県内で1980年代から始まったモズク養殖。現在では沖縄の特産品としても全国的に知られ、沖縄料理店や居酒屋でも、もずく酢やもずく天ぷらは定番メニューの一つとなっている。

 しかしモズク養殖はこれまで決して安定的に生産できていた訳ではなかった。直近10年間の生産量は約8000トン~約23000トンとばらつきがある。これには大きく以下3つの課題がある。

①芽が出ない
②芽が出て沖に出しても、苗床となる網から芽が落ちてしまう
③高温の海水中では成長しない

 これらの問題を解決するために品種改良が必要で、そのためにモズクの雌雄を判別する技術が求められていた。

モズク生産の工程と生産量の推移(OISTのHPより)

 実は今まで、モズクにそもそも雌雄があるのかも、また、仮にあったとしてもそれが2種類なのかそれ以上なのかも分かっていなかった。モズクを含む褐藻は、見た目こそ植物に近く感じられるものの、生物学的な分類では全くの別物で、西辻研究員は「植物と動物の違いと同じぐらいかけ離れている」という。そのため、研究者たちは褐藻については独自の知見を積み上げる必要があった。

雌雄判別実現で品種改良への足掛かり

 オキナワモズクの一生にはさまざまな「モード」のようなものがあり、人間の感覚では考えられないほど多様なものだ。

 種子にあたる「盤状体」には、1つの個体からでも世代によって“メス的な性質” “オス的な性質” “受精卵的な性質”を持つ3種類が存在する。そのうち、食用としてお店に並んでいる状態のモズクである「胞子体」に成長するのは“受精卵的な性質”を持つ盤状体だけだ。

オキナワモズクのライフサイクル。染色体が1組である「単相」の盤状体はオスかメスで、交配が可能となる。染色体が2組の「複相」の盤状体は、モズク養殖の種子として使え、一般的に知られるモズクの形(胞子体)に成長する。(OISTのHPより)

 今回の研究では、盤状体について、「オスにあってメスにない」「メスにあってオスにない」という遺伝子を探索し、それらを指標としたPCR検査法(特定の遺伝子を増幅しての検査)の開発に成功した。9つの雌雄関連遺伝子のうち、5つは“オス的な性質”にのみ、残りの4つは“メス的な性質”にのみ見られることが判明した。

PCRにより、単相の雄か雌か、複相かを判別できるようになった。(OISTのHPより)
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