【視点】沖縄経済に求められる発想の転換

 
沖縄県庁

生産性の低さ、それに伴う県民所得の低迷、子どもの貧困など、沖縄県は県民生活の向上に向けてさまざまな課題を抱えている。その沖縄県の今後の10年のありようを示す新たな沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の最終案がまとまった。この5月には沖縄が日本に復帰して50年を迎える。「自立型経済」を達成するには、これまでとは違った視点が必要だ。

「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」は期間を2022年度から2031年度までの10年間で、沖縄振興特別措置法で規定する「沖縄振興基本方針」に基づき策定され、2010年に策定された長期構想「沖縄21世紀ビジョン」の後期計画に位置付けられる。

「21世紀ビジョン」で示された「沖縄らしい自然と歴史、伝統、文化を大切にする島」「心豊かで、安全・安心に暮らせる島」「希望と活力にあふれる豊かな島」「世界に開かれた交流と共生の島」「多様な能力を発揮し、未来を拓く島」の5つの将来像の実現や、自立経済の構築などを目指している。

沖縄経済は、観光が県経済の牽引役となっているものの、2018年度の日本の名目国内総生産が548兆3,670億円だったのに対し、名目県内総生産4兆5,056億円で、日本全体の0.8%となっている。沖縄県人口の全国比が1.1%と比べれば、低い経済水準にとどまっていると言わざるを得ず、実際、1人当たり県民所得は全国最下位の水準に低迷している。

このため、今回の計画では1人当たり県民所得を2031年度までに20年度比77万円増の291万円となるという〝展望値〟を示している。

4つの特殊事情

さて、沖縄振興策というと必ず、沖縄の特殊事情というものが指摘される。沖縄振興特別措置法では沖縄県の4つの特殊事情が挙げられている。

それは、①多大な戦禍を被ったことや戦後四半世紀余にわたり日本の施政権の外にあったことなどの「歴史的事情」、②広大な海域に多数の離島が散在し、本土から遠隔にあるなどの「地理的事情」、③日本でも稀な亜熱帯海洋性気候にあり、特殊病害虫の存在や塩害、台風の常襲地帯などの「自然的事情」、④米軍専用施設・区域が集中しているなどの「社会的事情」-という「歴史」「地理」「自然」「社会事情」だ。

この4つの特殊事情に基づいたこれまでの沖縄振興策、つまり「本土との格差是正」を目指した社会資本整備などは全国平均になりつつある。しかし、「自立型経済」を目指すのであれば、これまでのような財政資金頼りの振興計画では限界があるだろう。

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