【検証・玉城県政①】減り続ける沖縄振興予算

 
片側1車線の状態で工事が進んでいない県道真知久茂地線(那覇市開南地区)

 9月11日に投票日を迎える沖縄県知事選挙。4年間におよぶ玉城デニー知事の県政運営が県民によって評価される。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐり国を相手取って裁判となるなど基地問題が注目されることが多いが、コロナ対応や経済振興など県政の重要課題は他にも数多くある。玉城県政について多角的に検証するシリーズの第1回目は、県政運営の根幹をなす予算についてだ。

 沖縄振興予算は、仲井真弘多県政の最後の年にあたる2014年度に3501億円に上ったが、翁長雄志県政に代わって以降、毎年のように減額となり、玉城県政となってもその傾向が続く。今年度はついに10年ぶりに3000億円を下回り、2684億円となった。予算の減少は県政にどのような影響をもたらしているのだろうか。

予算不足で用地買収もままらない

 県道の真地久茂地線は、那覇高校前の交差点を起点に、開南交差点や与儀交差点、識名トンネルを経て那覇市真地地区に抜ける道路だ。2010年10月にはこのうち識名トンネルを含む1.5キロが開通した。

 道路は片側2車線。県は全線が開通すれば、那覇の中心市街地から那覇インターチェンジや県立南部医療センターへのアクセス性が飛躍的に向上するとするが、計画のうち中心市街に近い開南地区の区間では、買収が済んだ用地と、まだ済んでいない用地が、虫食い状態となったまま工事が進んでいない。この区間では今も片側1車線のままとなっているため、路線バスの本数が多い朝夕の通勤時間帯には毎日のように渋滞が起きる。

「いったいいつまでこの状態が続くんだろうね」。この区間をよく通るというタクシーの運転手は、そうボヤいていた。

 県道真地久茂地線の全線開通の見通しが立たなくなっているのは、県の道路事業の予算が大きく落ち込み、用地買収を済ませることができないためだ。

 沖縄振興一括交付金のうち公共投資交付金、いわゆるハード交付金は仲井真県政の最後の年にあたる2014年度をピークに、年々、減少の一途をたどる。ハード交付金のうち道路整備を含む社会資本整備に使われる予算額だけ見ても、2014年度の612億円から今年度は184億円まで減った。実に3分の1以下である。

 社会資本整備だけではない。例えば、ハード交付金のうち学校施設整備でも、予算額は2014年度の64億円から今年度は半分の32億円となった。今年3月9日の県議会予算特別委員会で、県教育庁の施設課長は予算の減額により、22年度に予定していた県立学校の新増築事業1つと8つの改築事業、10の大規模改造事業、そして7つのグラウンド整備事業、合わせて26の事業の実施を見送らざるを得なかったと説明した。

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