【視点】知事の危機感の無さはなぜか 沖縄県予算案に思う

 
沖縄県庁

「こんな予算では仕事にならない」

 沖縄県の玉城デニー知事が2月議会に提案する2022年度予算案の説明資料を一読した県内大手建設会社幹部はそううめいた。

 県内紙やテレビ各社は予算案について「過去最大の額」「コロナ対策に全力」等との見出しで県のコロナ対策への決意、復帰50周年事業の内容などに対する期待を伝えたが、県内建設業からは上記のような不満の声が聞こえてくる。

予算案から窺える県の台所事情

 県のホームページに掲載された当初予算案を詳細に見ると、厳しい財政事情の中、むしろ事業を削って予算を調整しなければならない県の台所事情がうかがえる。

 建設会社は予算案のどこを見ているのか。予算資料の投資的経費の状況を見ると普通建設事業費が216億円の減額となっていることが目を引く。公共事業の予算規模は土建業にとって新年度の受注額に直接影響する重要な数字だ。企業にとって来年度予算案は、県関連工事による収益が大幅に減ることを意味している。

沖縄県の当初予算案説明資料より

 予算案全体の規模が過去最大になったのは、政府の財政措置を伴うコロナ対策費に1000億円以上の支出が見込まれているためだ。これを考慮すれば、県の予算は実質的に減額ともいえる。

 「選挙の年に公共工事予算をこれほど削ることは考えられない」

 先の建設会社幹部はそう言う。言うまでもなく、今年9月に沖縄県知事選が予定されている。通例、県政が保革いずれであっても執行部は公共工事予算を増やす、または減少しても最小限度に抑える等の配慮をするものだ。さもなくば大票田である土木建設企業関連の票を失いかねない。

 公共予算は複式簿記ではないので、表側の歳出額と歳入額はぴたり一致しなければならない。あまたの事業で歳出見込みが増額した場合、税収でまかなえない部分は主に政府の補助金や起債(借金)で対応することになる。

コロナ対策で食い潰された県の貯金

 オール沖縄による県政は政府交付金の減少を放置してきたが、それがここにきて大きく影響してきている。仲井眞弘多県政が「勝ち取った」3000億円規模の沖縄関連予算は年々減らされ、来年度は約2650億円となることが閣議決定された。政府は2400億円台に減額する方針だったが、新任の西銘恒三郎沖縄担当相に配慮してやや持ち直しての決定となったという。しかしこの減額で県は財源に不足をきたし、従前のように大きな歳出予算が組めない事態となった。税収もコロナの影響で減っている。

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