さらにコロナ蔓延防止策として数次の補正歳出が行われた結果、沖縄県財政の特徴であった他県に比べ余裕のある貯金も底をつきつつある。
本土復帰後、沖縄県の財政運営は類似の他県に比べて安定していた。復帰後は高率補助により負担が軽く抑えられ、浮いた部分を貯金=財政調整基金等として蓄えてきたことが大きな理由だ。だが、この2年ほどは県独自の感染対策のため立て続けに編成した補正予算により、その貯金はほとんど食い潰されてしまった。
看板政策でも具体策は見えない
このような県財政の現況を踏まえると、2月15日の県議会開会の冒頭に知事が行った来年度の施政方針表明には危機感が欠如しているとしか見えない。沖縄タイムスは具体的な施策の方向性が見えないと厳しく評価している。
例えば知事が政策の冒頭に掲げたのが、SDGsの推進によって、だれ一人取り残さない社会の実現だ。玉城知事は国際的なトレンドでもあるSDGsの推進にことのほか熱心だが、地方自治体レベルのSDGsはメディアが掲げるそれとは意味が異なる。行政の使命は目標にいたるまでの詳細なプロセスを作成することだ。
沖縄電力の石炭燃料依存率は40%に近く、県内の交通機関は依然としてハイブリッドも含めたガソリン車が主流となっている。すでに沖縄電力やガス業界はカーボンニュートラルへの対応を表明しているが、沖縄県は環境に負荷を与えている民間企業と早急に話し合いを持ち、温暖化ガスの削減と手当について取り組むべき段階にきている。
企業活動を鈍らせること無く目標達成を目指すため綿密で経済に配慮した具体的な事業を起こすことが大切だ。シンポジウム等の席で県幹部が「これからはSDGsだ」とぶち上げてみても組織は動かないのである。それなのに、玉城知事からは政府、国際機関、企業、各種団体との調整の上に立った具体的な政策は見えてこない。
翁長雄志県政の時代から県政策の目玉であったMICE(統合型リゾート施設)計画がここにきて規模の縮小を余儀なくされた。2月18日に玉城知事は規模を従来の3分の1に縮小する計画を明らかにした。沖縄観光を発展させる切り札として県が力を注いだプロジェクトだが、予算計画や場所の選定、事業規模等抑えるべきところが全く曖昧のままここへ来て当初の計画から随分後退した内容になってしまった。コロナ蔓延が長期化している中で、MICEに多くは期待できないという識者もいる。