「県政不景気」の予兆も
さりながら県はこれ以外に大規模予算を投入するビッグプロジェクトを持っていない。県政の停滞による「県政不景気」の予兆も聞こえてきそうだ。
「それにしても知事の危機感の無さはなぜだろう」
先の建設会社幹部はそういぶかる。とても2期目に臨む知事の施政方針とは思えないとも言う。一般に新任の知事は1期目に事業を仕込み、2期目で実行する。例えば、仲井眞県政では周到な計画作りと人事で、2期目に那覇空港第二滑走路、伊良部架橋、空手会館等を実現させた。辺野古問題で仲井眞知事が退任したため、完成は翁長知事時代に見たものも多いが、知事が事を成し遂げるには最低2期8年は必要であり、2期目が勝負というのは歴史が示している。
玉城知事は1期目を辺野古移設反対で費やした。2期目も抽象的な施策に終始すれば、沖縄は大きな停滞期を迎えかねない。それでなくとも、コロナによって観光業をはじめ県内の産業が大きな打撃を受けている最中である。建設会社幹部の焦燥は募るばかりだ。
さらにここへきて岸田内閣は沖縄政策に熱心ではないのではないかという声も聞こえてきた。2月15日、松野官房長官は記者会見の席で名護市辺野古で進む工事について「新基地」と口走ってしまった。すぐに訂正したが、いうまでもなく政府は公式に現在建設中の飛行場を「普天間飛行場代替施設」としており「新基地」は沖縄の負担増を強調する野党側の表現だ。緊張感の無さは、対立を抱えつつも沖縄への配慮を示してきた前政権の時代とは大違いだとの評もある。
安倍・菅両政権で官邸が主導してきた代替施設関連工事は、現政権で主体が防衛省に戻され、首相の関心は薄まったとも言われる。辺野古の工事が一定の進捗を見せる中、政府幹部の沖縄政策全般への細やかな配慮に期待できなくなることも考えなくてはならない。
今、沖縄県に必要とされているのは水面下で政府と交渉し、沖縄の事情を丁寧に説明して予算など必要なリソースをしっかり確保してくるとの姿勢だ。政府との交渉役の任を果たしていないと指摘されてきた謝花喜一郎副知事は今議会をもって退任する。後任の副知事とともに玉城知事が選挙の年にどのような形で県政を立て直すのか。県民は厳しい目で見ている。