地元のヒーローはインテリ男前

　組踊の人気演目「久志の若按司」は、その名の通り久志の若按司を主人公としたストーリーである。

　その昔、具志川城主であった天願按司が家臣である謝名大主の騙し討ちに遭い、按司の子であった千代松と乙鶴が久志の若按司を頼りに仇討ちを果たすという内容だ。組踊で描かれる久志の若按司は、義理堅くインテリな男前というキャラクターでファンが付くのも納得がいく。

　久志の若按司は英祖王を祖に持つ今帰仁系の家柄で、同じ系統には丘春や護佐丸などがいるといわれる。その若按司の位牌が祀られている瓦葺きの建物が久志集落の端にあり、若按司の墓も近くの久志の浜を見渡す海岸沿いに建っている。

　また若按司の墓から丘上に向けて少し歩くと、かなり年期の入ったお堂「久志観音堂」があり、お堂の中にはこれまた年期の入った観音様の石像が祀られている。

　こちらの観音様に関して１つ興味深い話が伝わっている。その昔中国に渡った首里の役人が、この観音様を見るやいなや一目で気に入り琉球に持ち帰って来た。いざ船から降ろし首里へ運ぼうとしたところ、観音様が「久志グヮーんかい！久志グヮーんかい！」と叫んだそうで、観音様がそう言うならと久志に奉納されたのだとか。

　同じ名護市にありながら、西の名護とは全く雰囲気の異なる東の久志。琉球から戦後の歴史まで色濃く残る町並みを、ゆっくり歩いて楽しんでみてはいかがだろう。