驚愕426kg!巨大山芋作り絶対王者山田さんが芋から学んだ事

 

生育技術を広める活動も

 山田さんは、近隣の恩納村や読谷村で講習会を行っている。指導した人の中からは300kg級の山芋を作る生産者も現れた。各地で切磋琢磨が起き、発祥のうるま市だけでなく、各地で山芋スーブが行われるなど文化の定着にも貢献している。

 大切にしている徳川家康の言葉がある。公遺訓の中に記されている『勝つことばかり知りて負くる』という一文だ。

「勝つことだけを考えすぎても足をすくわれるからね。周りの人たちの頑張りに自分自身も刺激を受けたいって部分はあるよね」

 沖縄の「芋界」に革命を起こした点で、時代が時代なら、琉球で初めて蕃薯(サツマイモ)の栽培をした野国総管や、それを広めた儀間真常と並ぶ、歴史的な偉人に位置付けられるのかも知れない。

山芋スーブ大会の参加者たち=うるま市 うるマルシェ

 大会のあとには、山田さんが作った山芋を使った料理が会場の人に振る舞われた。しかし、生産者である本人は一口も手を付けない。その理由を尋ねた。

「親子の関係と一緒だよね。芋の立場になったら、自分を食べる人と食べない人、どっちの期待に応えたい?どっちの下に生まれて来た方が幸せ?大きくなろうとする芋の気持ちを裏切ることを自分は絶対にしない!」

─でも、その山芋が食べられている様子を見るのはどういうお気持ちですか?

「それは別に良い、なぜなら食用だから」

山芋から教えられたこと

 山田さんの一年は山芋スーブを境に回っている。大みそかや年度末よりも、大会が総決算であるという思いが強いという。

「山芋スーブは一年の締め。でも結果を出して喜ぶのは大会で優勝したその日だけで、酔いしれるヒマはないよ」

 高みを目指すための自らとの戦いは、すでに始まっている。

「実はもう500kg級の山芋を作り出す答えを導き出しているんだよね。それを明日から完璧に実行するだけ」

 最後に、山芋から教えてもらったことを訊いた。

「芋って喋らないさ?だから芋が何を思っているのかを考える。それって人間と接する時も大事な向き合い方で、相手の気持ちを思うことができる。それに、愛情を注いだ分は裏切らない。目の前の相手を信じること!」

 長年の探求で、確かな哲学を確立していた。山芋以上に山田さんの人としての分厚さも年々大きくなっていく。

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